第43話 真相への道
香織と涼介は地元警察官の山本太郎と共に、不審な影の正体を突き止めるための捜査を開始した。防犯カメラの映像から、その影は商店街の裏通りを通っていくのが確認された。
「この道をたどって行けば、何か手がかりが見つかるかもしれない。」山本は地図を広げながら言った。
「私たちも協力します。絶対に見逃さないようにしましょう。」涼介は決意を込めて答えた。
「それじゃ、分担して調べましょう。私たちはこのエリアを担当します。」香織は涼介と共に、商店街の裏通りへと向かった。
香織と涼介は商店街の裏通りを注意深く調べ始めた。狭い路地には古びた建物や倉庫が立ち並び、昼間でも薄暗い雰囲気が漂っていた。
「ここは、夜になると特に人通りが少なくなる場所ね。」香織は周囲を見渡しながら言った。
「だからこそ、犯人はこの道を使ったのかもしれない。」涼介も同意した。
二人は一軒一軒の建物を調べ、近隣の住民にも話を聞いた。しかし、誰も不審な人物を見た覚えはなく、手がかりは掴めないままだった。
「何か見逃しているのかしら?」香織は眉をひそめた。
「もう一度、慎重に調べ直してみよう。」涼介は冷静に言った。
その時、近くの小さなカフェから声がかかった。
「すみません、あなたたちが探している人のことかもしれませんが、夜中に不審な人物がこの辺りをうろついているのを見かけました。」カフェの店主が言った。
「本当ですか?詳しく教えていただけますか?」香織は急いで店主の元へ駆け寄った。
「はい、あの夜、遅くまで店の片付けをしていた時に、黒いコートを着た人物がこの路地を通っていくのを見ました。ちょっと異様な感じがして、記憶に残っているんです。」店主は思い出しながら話した。
「その人物の顔や特徴は覚えていますか?」涼介が尋ねた。
「顔までははっきり見えませんでしたが、歩き方が少し不自然でした。まるで何かを隠しているかのように。」店主は答えた。
「ありがとうございます。その情報は非常に助かります。」香織は感謝の意を示した。
カフェの店主の話を元に、香織と涼介は再び防犯カメラの映像を詳しく調べることにした。映像を注意深く確認していくと、黒いコートを着た人物が金庫室の周辺を歩く姿が映し出されていた。
「この人物が鍵を握っているに違いない。」涼介は画面を指差しながら言った。
「ええ、この映像を元にさらに調査を進めましょう。」香織は決意を込めて答えた。
香織と涼介は、映像の解析を進めるために、専門の技術者に協力を依頼した。技術者は映像を解析し、人物の特徴を詳しく特定する作業を始めた。
「この解析結果が出れば、犯人の正体が明らかになるはずです。」技術者は自信を持って言った。
解析結果を待つ間、香織と涼介は再び地元の商店街を回り、追加の情報を集めることにした。彼らは商店街の人々から多くの協力を得て、次第に犯人の行動範囲や特徴が明らかになってきた。
「犯人は地元の人間の可能性が高いわね。」香織はメモを見ながら言った。
「そうだな。地元を知り尽くしている人物でなければ、こんなに巧妙な手口を使うことはできない。」涼介も同意した。
その時、技術者から解析結果が届いた。
「香織さん、涼介さん、解析結果が出ました。この人物の身元が判明しました。」技術者が報告した。
「ありがとう。早速確認しましょう。」香織と涼介は技術者の元へ駆け寄った。
解析結果によると、黒いコートを着た人物は地元の小さな商店のオーナーである中村雄一だった。彼は最近、商店の経営がうまくいかず、資金繰りに困っていたという。
「中村さんが…?」香織は驚きと共に呟いた。
「動機は十分だが、彼がどうやって金庫にアクセスしたのかを確認する必要がある。」涼介は冷静に言った。
香織と涼介は、中村雄一の商店を訪ねることにした。彼の店は静かで、商売があまり繁盛していない様子だった。
「中村さん、お話を伺いたいのですが。」香織が声をかけた。
「何でしょうか?」中村は不安げな表情を浮かべながら答えた。
「あなたが金庫室の周辺にいたことが防犯カメラの映像に映っていました。寄付金が消えた件について、何かご存知ですか?」涼介が直接尋ねた。
中村は一瞬言葉を失ったが、次第に口を開き始めた。
「私は…あの夜、確かに金庫室の周りをうろついていました。でも、それはただ…」中村は動揺しながら言った。
「真実を話してください。私たちは真相を知りたいだけです。」香織が優しく促した。
「実は、私は経営がうまくいかず、どうしても資金が必要だったんです。でも、寄付金を盗むつもりはありませんでした。ただ…その時、誰かが金庫室に入るのを見かけて、後を追っただけなんです。」中村は泣きそうな顔で答えた。
「誰かが金庫室に?」涼介が驚いた表情で尋ねた。
「はい、でもその人物の顔は見えませんでした。ただ、確かに何かを持って出て行くのを見ました。」中村は必死に話した。
「これは重要な情報です。中村さん、協力していただきありがとうございます。」香織は感謝の意を示した。
「どうか真実を明らかにしてください。私も協力します。」中村は深く頭を下げた。
香織と涼介は、中村の証言を元に新たな手がかりを追う決意を固めた。寄付金の行方はまだ不明だが、真相に一歩近づいたことを感じながら、二人は次の調査に向けて準備を始めた。
「必ず解決してみせる。」涼介が決意を込めて言った。
「ええ、地元のみんなのために。」香織も力強く答えた。
栄町銀天街の未来を守るため、香織と涼介の冒険は続く。次の手がかりを求めて、二人は更なる調査に乗り出すのだった。
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