第42話 地元の協力と新たな手がかり

夏の日差しが照りつける中、栄町銀天街では祭りの準備がさらに進んでいた。しかし、寄付金が消えた事件は未だ解決されておらず、商店街の人々は心配そうにその行方を案じていた。香織と涼介は、この難題を解決するために更なる手がかりを求めて調査を続けていた。


「香織、今日は地元の人々からもう少し詳しく話を聞いてみよう。」涼介は提案した。


「そうね。きっと何か見落としていることがあるはずだわ。」香織も同意し、二人は商店街の各店舗を訪ね始めた。


香織と涼介は、まず信用金庫の窓口担当である高橋美咲に話を聞くことにした。美咲は寄付金の扱いにも関わっており、何か手がかりを持っているかもしれない。


「美咲さん、寄付金が消えた件で何か心当たりはありませんか?」香織が尋ねた。


「そうですね…特に変わったことはなかったと思いますが、最近、金庫の周りで見かけた不審な影が気になっています。」美咲は記憶を辿りながら答えた。


「不審な影?」涼介が興味を示した。


「はい、夜遅くに誰かが金庫の周りをうろついているのを見たんです。でも、その時は特に気に留めていませんでした。」美咲は困惑した表情で続けた。


「それは重要な手がかりかもしれません。ありがとうございます、美咲さん。」香織は礼を言ってその情報をメモに書き留めた。


次に二人は、商店街会長の鈴木和夫に再度話を聞くことにした。鈴木は寄付金の管理者であり、事件の影響で心労が重なっている様子だった。


「鈴木さん、寄付金が消えた件について、最近何か変わったことはありませんか?」涼介が尋ねた。


「実は、孫が最近金庫に興味を持ち始めていて、何度か金庫室に近づいたことがあったんです。でも、まさか彼が…」鈴木は心配そうに言った。


「そのことについて、もう少し詳しく教えていただけますか?」香織が続けた。


「はい、孫は金庫の仕組みに興味を持っていて、鍵の使い方を知りたがっていました。私が目を離した隙に金庫室に入ったのかもしれません。」鈴木は苦しそうに答えた。


香織と涼介は、鈴木の孫に直接話を聞くことにした。彼はまだ幼く、何も知らない様子だったが、隠しきれない表情から何かを知っていることが伺えた。


「お孫さん、最近金庫に近づいたことがあるって聞いたけど、何か知っていることがあれば教えてくれる?」涼介が優しく問いかけた。


「うん…実は、金庫の鍵を見つけて、ちょっとだけ開けてみたんだ。でも、お金を取ったりはしてないよ。」孫は正直に答えた。


「じゃあ、その時に何か変わったことはあった?」香織が続けた。


「えっと…金庫を開けた時に、中にすでに誰かがいたような気がしたんだ。誰かがすぐに扉を閉めたんだけど、その時に見えた影が怖くて…」孫は少し震えながら話した。


「ありがとう。君のおかげで重要な手がかりが得られたわ。」香織は優しく微笑み、孫に感謝の言葉を伝えた。


孫の証言を元に、香織と涼介は再び金庫室の防犯カメラ映像を確認することにした。映像をじっくりと見直すと、確かに夜遅くに不審な影が金庫室の周りをうろついているのが映っていた。


「この影、やっぱり不審だわ。」香織は映像を指差しながら言った。


「確かに。この人物を追跡すれば、寄付金の行方が分かるかもしれない。」涼介も同意した。


香織と涼介は、地元警察官の山本太郎にも協力を依頼し、不審な影の正体を突き止めるための捜査を開始した。山本は地元の治安を守るために尽力しており、この事件解決のために全力を尽くすことを約束した。


「この不審者を見つけ出し、事件を解決しましょう。」山本は力強く言った。


「はい、皆さんの協力に感謝します。」香織は深く頭を下げた。


調査はまだ始まったばかりだが、香織と涼介は新たな手がかりを掴み、寄付金の行方を追う決意を新たにした。地元の人々の期待を背に、二人は次の一歩を踏み出す。栄町銀天街に広がる夏祭りの準備は続く中、その背後には新たな謎と真実が待ち受けているのだった。


「必ず解決してみせる。」涼介が決意を込めて言った。


「ええ、地元のみんなのために。」香織も力強く答えた。


栄町銀天街の未来を守るため、香織と涼介の冒険は続く。次の手がかりを求めて、二人は更なる調査に乗り出すのだった。

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