中学校の水泳大会!
崔 梨遙(再)
1話完結:1100字
中学の時は、毎年水泳大会があった。これは、2年生の時のお話。
誰がどの競技に参加するか? それを決めるホームルームの時間があった。トイレに行って帰ってくると、僕の名前が黒板に書かれていた。前年は50m自由形でトップ、クラスの勝利に貢献した僕だったのだが、黒板に書かれた僕の名前は50m背泳ぎになっていた。おいおい、待ってくれ。背泳ぎなんて出来ないぞ。っていうか、背泳ぎなんて授業でもろくに教わっていない。なんで授業で教わっていない種目があるんだよ! 僕は文句を言ったが、みんな笑いながら、
「ええやんか」
「崔なら出来る!」
「トイレに行くのが悪いねん」
「崔君、頼むわ」
と言うだけだった。
僕はかなり粘って抗議したが、もう決まってしまっていたので、誰も僕の味方になってくれなかった。最終的には、多数決という少数派の意見を潰す手段で押し切られた。ちなみに、“僕の背泳ぎ50メートルに賛成か? 反対か?”の多数決、反対は僕だけ、賛成はクラス全員だった。とうとう覆すことは出来なかった。実は、僕には同じクラスに好きな女子がいた。その娘(こ)は奈江ちゃん。僕は、奈江ちゃんにカッコイイところを見せたかった。見せたかったのに、背泳ぎでいいところは見せられないだろう。
大会当日、いよいよ僕の番が回って来た。
スタートしてみると、思っていたよりも泳げた。“やれば出来るんだなぁ”と思った。序盤は僕が1位だった。しかし、ここで難関があった。25mでターンをしなければいけない。“見えないのに、どうやってターンするんだ?”僕はそう思いながら泳いでいたが、ターンすべき飛び込み台のある壁に頭を強打した。
ゴーーーーーン!
いい音が鳴った。その時、クラスの女子が笑っているのが見えた。僕が好きだった奈江も笑っていた。“めっちゃカッコ悪い!”僕はやる気を失って、その後はチャプチャプとのんびり泳いだ。勿論、最下位だった。テンションは爆下がりだった。
ああ、カッコイイところ見せたかったなぁ。
そして翌年、3年生の時も、トイレから帰ってきたら僕は50m背泳ぎと黒板に書かれていた。ホームルームでトイレに行くと背泳ぎにされてしまうのか? 僕は2年の時に既に恥をかいていたので、背泳ぎになった結果を、もう何も言わず受け止めた。
そして、また、
ゴーーーーーン!
いい音が鳴り響いた。同じことを繰り返す僕だった。また、女子に大ウケ。
ちなみに、男ばかりだった高校では水泳大会が無かった。男だらけの水泳大会にならずにすんだのはラッキーだった。やっぱり、女子がいないと楽しくない。
中学校の水泳大会! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます