第三話 まぼろしの幸せ

繰り返しになるが、沙織とみっちゃんの寝物語は続いている。


「たかしさんに言われたんだ。『僕と本当にお付き合いしよう』って」

三月「いい男じゃん…たかしさん」

「いい男だよ…だから結婚の約束したんだよ」

三月「…なるほど、今日の話の主題は『昔の男とよりを戻したい』と…」

「…んなことこれっぽっちも思ってないよ!いいから最後まで話を聞け〜〜っ!!」


―◇―


あの…思い出すのもおぞましい…3人の男になぶり犯された夜からしばらくして…


大学やサークルにも来ない私を心配したたかしさんが私のアパートに訪ねてきてくれたんだ。


…店長のことを相談出来るのは…彼だけだった。


不倫のお付き合いを辞めたいと相談した沙織に、彼は、「普通の彼氏が出来たと言えばきっと向こうのほうから諦めるはずだよ」と言ってくれた。


「それでも引かない場合はまかせて」と。


―◇―


三月「それでたかしさんと店長の直接対決…か」

「…うん…たかしさん『全部知ってる』って…『それでも沙織さんと付き合っている』って…」


店長「沙織ちゃんは、君が思っているよりもはるかに淫乱だ。君の手には負えないよ」

たかし「沙織さんにはそういう一面もあるのかもしれない。でも、あなたこそ、大学やサークルで、皆に頼りにされながら頑張る彼女を知らないですよね。僕には大切な女性なんです」


三月「…かっこいいな…惚れるわ」

「…でしょ?」

三月「…なんだろう…嫁の元カレへの惚気を聞くときが来るとは…へこむわ」


「…みっちゃんねっ!…そこまで言うならこの際だから言っちゃうけどさ!…あなたの女性関係南ちゃんとか実乃里さんとかってば…」

三月「分かったっ!俺が全面的に悪かった!…それでこの話の続きは?」

「…もうっ…」


―◇―


「店長が別れを受けいれて…その帰りに『頑張ったね』と笑うたかしさんの前でさ…もう涙が止まらなかったよ」


たかし「僕は本気だよ。僕と付き合ってください。…ずっと前から…君が好きだったんだ」


三月「…ホントこれだけ聞くと何で沙織たちが別れたのかわかんないくらいだけど」

「…そう思うよね…でもさ…結局、因果は回るんだよね…それと」

三月「それと?」

「彼はね…その時はまだ…ハタチそこそこだったんだよ…みっちゃんとは…経験が…」

三月「…ごめん、俺もハタチも未熟な時期もあったんだけど!」

「…どすけべで女の敵な?」

三月「ほんと酷い!!」


―◇―


私たちは、本当の公認カップルになった。

彼との日々は穏やかで幸せだった。


夜の行為も同じ。


「僕はそんなに経験が無いから」と恥ずかしがる彼とのセックスは、幸せに満たされるものだった。


お互いどうすれば気持ち良くなるかを伝えあって、私たちは幸せな行為を一緒に形創っていったんだ。



大学生活も終わりが見えた頃、私はたかしさんからのプロポーズを承諾した。


私は生保の総合職に、たかしさんは東京の中堅処の商社の内定を得て、「社会経験を積み重ねたら結婚しよう」と。


お互いの親にも挨拶に行った。

大阪で商社を経営するたかしさんのお父さまは、


「二人で社会経験を積んで、私たちの会社に戻って来てください。沙織さん、これからは女性の活躍する時代ですよ。」

と微笑まれた。


お母さまは、終始優しい笑顔で、

「あなたのようなお嬢さんが私の娘になってくださるなんて本当に嬉しいわ」

とおっしゃられていた。


幸せな明るい未来が待っている気がしていた。


その時までは。



それは一通の郵便物がもたらした破綻。


もし、私が先にそれを受け取っていたら結末は違っていたかもしれない。


でもそのとき先にそれを手にしたのは、半同棲状態だったたかしさんだったんだ。


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