短歌を数えるときは一句じゃなくて一首だよ☆
「では、僭越ながら僕が短歌の基本をお教え致します」
母は拍手を送る。パチパチうるさい。
「まず、短歌は57577の31音でできています。最初の5音を初句、次の7音を二句、その次の5音を三句と呼びます。この三つだけだと俳句や川柳ができます。ですが、短歌は更に77の14音が足されます。お得です」
何がお得なのか。やっぱりこの男は適当だ。
「次の7音が四句、最後の7音が結句です。覚えましたか?」
男に尋ねられた母は首を傾げる。駄目だ。覚えていない。
「大丈夫です。覚えなくていいです。お母様に今お伝えしたいのは、龍也くんは一番最後にちくわ天を食べるから、短歌を作る際も一番最後に大事なポイントを持ってくるタイプです。モンブランの栗も最後食べるでしょう?」
母は「まぁ、よくご存知で!」と大きな声を上げる。近所迷惑だ。
「でしょう。歌人の傾向は、短歌に表れます。隠しても無駄です」
男はこちらを見てニヤリと口端を上げる。嫌な予感しかしない。
「龍也くん、自分が作った短歌読み上げてくれるかな」
「嫌です!」
僕が拒否すると男は本を取り出した。それは、僕の作品が掲載されたときの短歌探究だ。男は朗々と読み上げる。
「学ランのボタンちぎって投げ捨てた 鮮やか過ぎる彼岸の桜」
母はまたパチパチと拍手をする。僕の短歌と男の朗読、どちらを褒めたいのか。
強い風が吹いたらしい。ベランダの外に桜吹雪が舞う。
って、待て。家はマンションの6階だ。こんな高さに桜があるわけがない。
「ありがとうございます!……行こう」
男は僕の腕を奪って玄関へ走り出す。玄関を出た途端に、男は叫んだ。
「また来たか、出来損ない!」
戦闘短歌部 新棚のい/HCCMONO @HCCMONO
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。戦闘短歌部の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます