第42話:大西配列を一瞬体験してみた話

キーボードの配列と言えば、タイプライターから続く伝統のQWERTY配列が基本だよね。


僕も、QWERTY配列で20年以上慣らされている人間だから、基本的にはQWERTY配列に疑問を抱いたことはなかった。


とはいえ、選択肢が無かったからというのがあるだろう。キーボード配列はQWERTYしかない。少なくとも、既製品の配列には他の配列はないし、WindowsもMacもシステムではQWERTYしか前提としていない。


ただ、世の中には配列に疑問を抱き、異なる配列を作る人がいる。


大西配列を作った大西氏も、そのうちの一人だ。


日本語を入力しやすいように、そして英語も入力できるように考えて作られているらしい。


大西配列のサイトに行くと、試しに大西配列が打てるコーナーがある。


試しに打ってみた。


子供の頃を思い出した。


ああ、僕がはじめてパソコンに触ったときも、こうだったなあ……。あのときは、親が特打というタイピングゲームをパソコンと一緒に買ってきて、僕はそれを使ってキーを一つ一つ見ながら、ゆっくりと打って覚えていたもんだ。


今では、入力中にキーを見る機会は一切無くなった。


大西配列はハードウェア側が対応していないため、手元を見るということはないけれど、ゆっくりゆっくりと「これか? こっちか」と打っている感覚は、妙に懐かしく、なんとも言えない気持ちになったよ。


実際に打ってみるとわかるが、確かにこれは慣れれば楽なんだろうなと思う。速く入力できるかどうかは別だが、楽ではあるだろう。


流石に20年以上使い続けているQWERTY配列のタイピング速度を抜くことは、慣れた後でも難しいとは思うが、大西配列入力時の手を見ると、手の移動はかなり減っていた。


40%分割キーボードを使う人の中には、大西配列を使う人も結構いる。


40%分割キーボードは、手の移動を少なくできるのがメリットだ。なるほど、そういうことなのね。


しかも、リマップ前提のキーボードだから、特別なソフトウェアを入れなくても大西配列に出来てしまうというね。


配列をじっくり見てみると面白い。


日本語での使用頻度が低いzxcvあたりは、そのままになっている。


pとか記号とかも結構そのままだ。


AIUEOの母音が全部左手側に収まることによって、右手と左手を交互に動かすという感じになることが多くなっている。連続で同じ手や指を使う機会を減らした配列、ということになるだろうか。


確かに優れた配列だと思う。


こんなん、よく思いつくなあ……。


ただ、これを使うにはキーキャップに直筆のシールを貼る必要があると思う。


この刻印のキーボードがないからね。


無刻印のキーキャップに、大西配列用のシールを覚えるまでは張り続けないと覚えようがないなこれ。


あと、これを覚えてこれに慣れてしまったらきっと、外でキーボードが打てなくなるんじゃないかな。図書館で調べたいときとか、QWERTYってどうやるんだっけってなりそう。


また、大西配列をじっくり眺めて気がついたけど、ショートカットは打ちにくくなるんじゃないかなと思う。


僕はCtrl系のショートカットしか基本的に使わないからいいけどね。


ZXCは位置変わらないし、Sは右手側だから左手でCtrl押して右手でS押せばいいしね。Fも同様。


Ctrl系のショートカットは、普通に打ちやすそう。それ以外のショートカットは、物によっては打ちにくくなりそうだなと思った。


ちなみに、試してみたときのタイピング速度だけど……。


流石に現在の10分の1くらいだったかもしれないけど、パソコン使えない人よりは速いくらいだったと思う。初見でもそこそこ適応できるのが、素晴らしいね。


なお、これを導入すると仕事がしばらく超遅くなりそうなので、流石に導入まではしないと思う。


あくまでも、なんとなく気になって試してみただけだよ。


だけど、僕という人間は「やらないと思う」と言ったこと、大抵やるから将来的にはわからないけどね。


仕事が遅くなるとはいえ、自宅でしか仕事をしない僕のような人間のほうが、習得はしやすいだろう。変態配列キーボードの習得も基本的にそうだけど、使い続けられるかどうかで習得難度と期間は変わる。


それだけを使い続けることが、変態配列習得の近道だ。


ま、会社員やってたら無理な話だね。


また、QWERTY配列が速く打てるのにはちょっとした理由がある。


日本語の場合、「理由」と打つときの「ゆう」だ。


隣り合ってて、同じ手だけど違う指だからタタンッと打てる。英語のYOUもそうだよね。こういうところが、QWERTYの強み。


大西配列はここらへんを捨てていて、タイピングの楽さに重きを置いている。開発者いわく、「トップスピードを上げる目的ではない」「速さの概念も人によっては一定速度で疲れずに打てることや覚えやすさだったりする」とのこと。


「中央値のスピードを上げる」というイメージが近いのだそうだ。


ちなみに、大西配列は小指まで駆使するのを前提にしているところが結構ある。


僕は、小指は修飾キーとアローキー以外に一切使わない。


薬指までしか使わないし、薬指も左手に関しては「qwaz」にしか使わない。右手なんかは、エンター、バックスペースにしか使っていない。


結構独自タイピングをする人間だ。


小指でキー打つと、疲れるんだよね。


ただ、QWERTYも別に小指使わない想定はされていないのを勝手に使わないように最適化して打っているだけなので、大西配列も慣れたら多分小指使わずに最適化できるんだと思う。


試し打ち程度だと、想定されている打ち方をしないと場所がわからなくなるんでね……。


まあ、導入するかどうかはともかくとして、面白かった。


また思い出したかのように、大西配列のサイトで試し打ちしてみようと思う。

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