第2話 前世の記憶とこれからのこと
前世、こことは違う世界の日本という国に生まれた私は二十歳を迎えることなく事故により儚くなりました。
その記憶もしっかりとありながら、燃えるような赤い髪と青い瞳の私はこのラスクート王国のカルバーノ子爵家嫡子として生まれ生きてきた記憶も勿論あります。
むしろ其方のほうが強いでしょう、然しながら現代日本で文明の恩恵を受けながら生きてきた私にとって、中世の大陸のような稚拙な環境は耐え難いものだと、記憶が呼び覚まされた瞬間から感じていました。
取り急ぎやらなければならないことは上下水道の整備、これは急務です。
海に面したカルバーノ子爵領はファステン侯爵領の中にあり、王都から馬車で一週間の距離にあります。
僻地です、北側には山脈が連なり東向かい広大な農地がひろがり、南には国境があります。
産業がなく酪農を主にする我が領地は決して豊かではないため、前世の知識をはっきりと持った今、領地改革をするには時間が惜しいのですが。
学園は夏季休暇中なので次に領地へ帰るのは冬季休暇の頃になります。
王都にある学園の卒園はこの国の貴族として必須とされているため、このまま領地に留まり改革に着手するのは不可能。
ならば次に領地に戻るそれまでに上下水道整備をしておきたいところ。
記憶が戻る前にある程度前世の知識が無意識に漏れていたのか上下水道の素案は既に出来ていました、特に浄水場の設備などの開発には魔塔と契約を交わし進めていた事業でもあるのですが、今まで動けなかった大きな理由は兎にも角にも資金面でした。
しかし、ファステン前侯爵であるお祖父さまが正式に後ろ盾として資金援助を申し出てくれました。
私が学園を卒園するまで、私のアイデアに投資をするのだと甘やかしてくれるそうなので、今は遠慮なく甘えます。
実父は私の代理ではありましたが領地運営は一切出来ず、母が儚くなってからの三年間は母が領主だった頃と変わらずただ遊んでいました。
役立たずめ!
アイデアはあれど、資金が回らず動けなかったものを祖父の支援がある卒園までには形にしていきたいところ。
来週には学園に戻るため週末に全て手配をしなければなりません。
そしてこちらも急務ですが、石鹸と消毒の必要性を領民に周知しなければなりません。
上下水道含むこれら衛生面の強化は疫病を防ぎ、強いては領地の発展へ必ず繋がるはずです。
この世界の医療は前世と比較するもかなり遅れています。
なんなら衛生面含み江戸時代ぐらいまで遡るほど遅れているのです、ならまず元現代っ子的に着手すべきは衛生面でしょう。
衛生面をクリアすれば他にも色々出来ることがあります。
折角ある港の整備、今は長い航海が出来ない他国との貿易は飛躍的に航海時間を伸ばせるはずです。
雨季の度に水害が起きる街中は道を整備すれば。
どんどん湧き上がるアイデアを紙に書き留めていきます。
キリがないので一旦手を止めると私は上下水道整備のための指示書を書き上げました。
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