第2話 イケメンたちとお昼ご飯⁉

 やっとふぅ~って落ち着ける、翌日の昼下がり。


 友達になった松葉まつば彩里いろり碓氷うすい七羽なのは鹿島かしま莉乃りのと一緒に、お弁当を食べていた。


 彩里は元気でうるさい性格だけど、根は優しい。まだ出会って一日だからよくわからないけど、心優しい人だってことはわかった。


 七羽はしっかり者で冷静だけど優しい。元気な彩里や噂好きの莉乃をたしなめてくれる。


 莉乃は噂が大好きだけど、可愛くて男子にモテている。特にバスケが得意だけど、運動全般できるんだ。


 三人とも私と同じで、中学受験で学園に入ったの!


「そーいや胡桃、昨日迷子になったんだって?」


 甘そうな卵焼きを頬張りながら、彩里が私に問う。


「そうだけど……なんで知ってるの?」

「噂になってるよー」


 と冷静でノンキな七羽が、唐揚げを口に入れながら言う。


「えーっ、なんで⁉︎」


 私は彩里たちに話した覚えないよ?


「だってあのと一緒にお昼ご飯食べたんでしょ? しかも奢りで! チョー噂になってるんだから!!」


 と、噂好きの莉乃が瞳をキラキラさせる。


って何?」

「彼氏にしたいイケメンの頂点4人だよ! 知らないの?」


 し、知らなかった…。

 しっかり者で優しい、いかにも恋愛に興味なさそうな七羽さえもうんうんと頷いている。

 っていうか、私そんな学園で有名な人たちと、昨日一緒に昼ご飯食べたんだ…。

 思い返すと怖くてブルブルと震える。


「私は陽太先輩推しかな! あとは百航先輩…」


 と、彩里がほんのり顔を赤くして言う。


「百航先輩わかる。あとは翼先輩かな」

「翼先輩めっちゃそれなだよ! あとは大和先輩かなぁ……♡」


 あのしっかり者の七羽までも、推しがいる!!

 っていうか全員二人ずつじゃん。二股じゃん。


「へ、へー……」


 すると急に、周りの女子たちが「キャー!!」と青色の声を上げる。

 ※こう言う時の歓声は、青じゃなくて黄色だよ!


「あ、噂をすれば!」


 彩里が後ろのドアを指差す。


「え?」


 そう言って振り向いた瞬間――固まった。


「よっ、胡桃。ちょっと部室行かねぇ?」


 と大和先輩あらため大和くん率いる軽音楽部4人が、手を挙げて、軽い感じで問いかける。

 その視線は、どう見ても私を向いていた。


「いやいや! 私入部しないって言いましたよね?」

「じゃあ休み時間中付き纏うけどいい?」

「勝手にしてください!」


 (だっけ?)への私の雑なタイオーに、男女問わずみんなが目を見開いている。


「そんじゃ、飯食うかー! ごめん、ちょっといいか?」


 陽太先輩……あらため陽ちゃん? にそう言われた彩里は、ぽーっと顔が紅くなっている。

 先輩が指差したのは、私と彩里の間。


「もっ、もももちろんでございますよぉ!!」


 と遅れて反応の彩里。

 ちょっと日本語おかしい気はしたけど、指摘もめんどくさいからやめとこ。


「俺も隣いい?」


 大和くんは、私と莉乃の間を指差す。


「ありがとうございまーす!!」


 返し方が違うって!


「…僕、ここいい?」

「ははははいっ」


 つばっさー? が入ったのは彩里と七羽の間。

 七羽の反対の隣、つまり彩里との間に入ったのはか……かずかず? だ。

 かずかずが一番言いづらい。


「いっただっきまーす!!」

「陽ちゃん、ココ一年の教室だからうるさいぞ」


 大和くんの冷静なツッコミに、みんながどっと笑う。


 クラスメートたちの笑いで、三人とも少しだけ緊張が解けたみたい。


「よっ、陽太先輩! 卵焼き、あげますっ……!!」

「え、マジで? いいの⁉︎ じゃあ俺の肉巻きあげるー!」

「えっ、いいんですか? ありがとうございます!!」


 彩里は本推し(なんじゃそりゃ)の陽ちゃんにアタック。いい感じの雰囲気だ。陽ちゃんの肉巻き美味しそう……ジュル。


「あの……翼先輩、この本のここの場面が大好きなんですけど……」

「それめっちゃ分かる。ここの描写上手いよな」

「そうなんです! 私小説書いてるんですけど……」


 七羽はつばっさーと好きな本の話で意気投合している。


「百航先輩! この学校の七不思議ってありますか?」

「七不思議? 高校にはあるよ」

「えっ⁉︎ 本当ですか⁉︎ どんなのですか?」


 莉乃は、か……かずかずに、七不思議について興味津々に聞いている。

 恋する女の子って可愛いよね!

 ヒゲナンフォートップ? が来たっていうのに何故か女子たちが大人しい教室は、居心地が良かった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ねー胡桃、軽音楽部入ろ?」

「おい、胡桃。部活決まってないんだろ?」

「胡桃ちゃん、ここは本当に楽しいよ」

「……胡桃、ずっとこうなるの覚悟して無視してるんだよね?」

「もうどーでもいいですよ! 入部しませんから!!」


 結局、お昼ご飯を食べ終わった途端に、嵐の勧誘に見舞われるのであった。

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