現役薬剤師としてのリアルな体験に、“霊が見える”という不思議な要素を巧みに掛け合わせた秀逸な一作です。
実際の薬局勤務経験に裏づけられた描写は細部まで臨場感があり、読者を確かな現実へと引き込みます。
そんな日常に、ふと入り込む非日常――霊という存在が、かえって人の営みの尊さを際立たせます。
そして物語が進むにつれ、恐怖の矛先は変わっていく。
本当に怖いのは幽霊ではない。
“生きている人間”の心の奥に潜む闇なのではないかと、静かに語りかけてくるのです。
読み終えたあと、背筋を這うような余韻とともに、深い人間の怖さが残ります。
――静かに、しかし確実に心を掴んで離さない作品です。