第39話 カメラ選び相談(花咲さん)
「今の説明で分かったかな? 花咲さん」
先輩がぼくの隣を見ながらそう言ったので、ぼくははっとして右横を向いた。急に動いたので肘が柔らかい二の腕にぷにっと当たった。
「わああっ!」ぼくは驚いて間抜けな声を出してしまった。
いつの間にか花咲さんが来て隣りに座っていた。
「もう、ノクト君は先輩にデレデレね♡」
「そ、そうですか…」
まさかカメラと先輩に見入っていて気づかなかったとは。ぼくは恥ずかしさで顔が燃えそうだった。
「ちょうどいいわ」先輩がぼくのカメラ選びの相談を花咲さんに振った。「ノクト君がこんどカメラを買ってもらえるんだって。予算5万円だそうよ。あなたなら何を選ぶ?」予算まであけすけに。
「5万円か……」花咲さんが、肩の上で明るい色のくせ毛をふわっと揺らしながら、首を傾げて考えた。「私もね、カメラ欲しいのよ。V1も嫌いじゃないんだけど、レンズが出っ張ってて邪魔だから。あと、レンズ交換しなきゃいけないのも不便ね」
「花咲さんの要望は新鮮ね」先輩がうなづいた。「私からはとても出てこない発想よ」
「それで、実はソニーのRX100が欲しい」
「欲しいって」とぼく。
「ノクト君買って。そして私に貸して」花咲さんはそう言って左肩でぼくの肩をつついた。
「そう来ますか」
ぼくは半ばあきれながら、立ち上がり、パソコンの前に移動した。
「ソニーのRX100ですね。ええと……」カメラメーカーのサイトで検索して、出てきたカメラのサムネイルをクリックした。「RX100M7。24-200mmのズームって便利そうですね。2000万画素1インチセンサー、ああ、これも1インチなんだ」
「RX100って、コンパクトデジカメだけどなかなかいいでしょう」花咲さんが、ぼくの右隣でパソコンのモニターを見ながら言った(左隣はニコ先輩)。「この前見た映画で、チハヤさんが使ってたわ」
「それって、あのチハヤさんですか……」
他作品のキャラ名をどこまで出していいのやらと考えつつ、ぼくはパソコンを操作した。ウルトラマンとか仮面ライダーみたいに考えれば気にしなくてもいいだろうか。
「確かになかなかかっこいいですね。で、お値段は…」マウスで画面をスクロールすると数字が見えた。「くっ」
「予算オーバーね」ニコ先輩がとどめの一言。「ノクト君は中古を買えばいいんじゃないの?」
「じゃあ中古を…………」先輩がそう薦めるので、中古のカメラ店のサイトを検索した。その結果は……。「くっ」
「10万円オーバーか、『SOLD OUT』ね……」先輩がため息交じりに言った。
「安い中古は一瞬で売れてしまうんでしょうね」
「はぁ~~、やっぱりいいカメラみたいね♡」花咲さんはぼくの予算オーバーだということなど気にもしないで、ますますこのカメラが欲しくなったようだ。
「やっぱり」ぼくはパソコンを背に二人に向き直って、改めて言った「できればレンズ交換するやつがいいです」
「そうなの?」と先輩。
「そうです」
「ええ~~」花咲さんは不満そうに頬を膨らませた。
「まあ今日決めなきゃいけない話じゃないわね。ゆっくり考えて」先輩は落ち着いてアドバイスしてくれた。
「そうします」
二人がぼくのそばから離れて、テーブルで女子トークを始めた。ぼくは、その後もカメラ店のWEBページをいろいろ眺めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます