デジカメについてあれこれ

第19話 画像を保存しよう

 月曜日の放課後。夕日が差す部室に行くと部長とニコ先輩がいた。

「D70をお返しします」ぼくは通学リュックからカメラを出してテーブルに置いた。

「データはコピーした?」ニコ先輩がD70を手にとると、異常がないか観察しながら訊いた。

「いえ、まだカメラに入ったままです」ぼくは正直に答えた。「ぼくはパソコン持ってないので……」

「遅くなりました」そこにちょうど花咲さんも来た。

「じゃあとりあえず」座っていた部長が立ち上がり、先輩にチラと目配せしてから、ぼくらに提案した。「部のパソコンに取り込もうか」

「お願いします」

「え、今から写真取り込むんですか?」と花咲さん。

「うん」頷く部長。

「楽しみですね」花咲さんの声が弾んだ。「私も見せてください!」

「もちろんどうぞ」部長は気軽にそう応えるとパソコンの前に座って準備を進めた。

 ぼくと花咲さんは並んで後ろからモニターを覗いた。離れて座っている先輩は遠巻きにぼくらを見ていた。

 部長は机の脇のタワー型パソコンの電源ボタンを押し、Windows 11の起動画面にPINを打ち込んでデスクトップを立ち上げた。写真部の窓から見える夕日の写真が壁紙になっていた。

「Windowsのアカウントは、写真部で共有にしているんだ。写真は『ピクチャ』フォルダーの下に名前のフォルダーを作って、そこに入れるのがここのやり方だよ」部長が説明した。「もちろん、誰が見てもいい写真だけ保存してもらえるかな」


「D70はUSBケーブルでパソコンに繋げられる」部長はニコ先輩の前のテーブルからD70を掴んで持ってくると訊いた。「カードリーダー使ってもいいけど。どっちがいい?」

「いえ、別にどちらでも」ぼくには選びようがない。

 部長は机の脇にあるパソコンの本体にUSBケーブルを差し込み、一方の端子をカメラに接続した。

「写真の取り込みはカメラメーカーの専用ソフトを使うね」マウスを操作しながら部長が説明を続けた。「君はこのPCが『Windows 11』だとかPINでログインできるとか一通り理解してるようだから、それに合わせて説明してゆこう」

 部長はぼくのパソコンの理解度を推測すると、説明の方針を決めた。

「まずはUSBで繋いだカメラのスイッチを入れて、と」

 程なく、パソコンがD70を検出した。

「『NX Studio』というプログラムが、ニコンがユーザーに向けて無料で配布している画像ファイル管理ソフトだよ。『☆ミラーレス!』だからね。もうView NXの時代じゃない」部長はよくわからないことを言いながらデスクトップのアイコンの一つをダブルクリックした。「このソフトで画像の閲覧やカメラからの写真取り込みができるし、簡単な画像の調整やRAW現像ができるんだ。しかも無料」

「はい」

 プログラムが起動すると、黒いウインドウが現れ、そこにパソコンに保存された写真が並んだ。入学式の写真だった。

「各メーカーが同じようなプログラムを出しているはず」部長が他のカメラメーカーのユーザーに配慮したセリフを加えた。「僕はニコンのしか知らないけど」

「ぼくは何も知らなかったので問題ないです」

「カメラから写真を転送するには」部長はマウスを操作した。「NX Studioの『取り込む』を実行するよ」

「はい」

 部長は左上の「取り込む」という「↓」こんなアイコンをクリックした。

「今、『Nikon Transfer 2』というファイル取り込み用のプログラムが立ち上がったところ」

 別ウインドウでそのソフトが起動し、小さい写真がずらっと並んだ。写真は見覚えがある。まさに一昨日公園で撮った写真だ。

「転送先は『ピクチャ』フォルダーに『ノクト58』と新しいフォルダーを作って……」部長は写真の保存先を作った。「今日の年月日を8桁の数字でサブフォルダ名にして、『サブフォルダーを使用しない』を選んで……。ここをクリック」

 部長が「転送開始」のボタンを押すと、ファイル取り込みが始まった。

「やり方は分かったね?」

「はい」

「じゃあ、次からは勝手にやっていいからね」部長はパソコン席から立ち上がりながら言った。「写真はもうパソコンに転送されたから、カメラのメモリーは消去して大丈夫」

「え、消しちゃうんですか?」

「消すよ。次にカメラ使うときに、容量空けるために」

「なんかもったいないですね」

「うっかりパソコンのファイルが消える可能性もあるから、急いで消すことはないけど、空き容量が減ったら容赦なく消すよ」部長がD70からUSBケーブルを抜きながら言った。「どんどん消してどんどん撮らないと」

「そうなんですか」

 部長は平然と言うけど、ぼくはまだ、なんか写真を消すのがもったいない気がした。

「メモリーカードの写真は時間が経てば消えてしまうから、いずれにしてもパソコンに転送しないとダメよ」ニコ先輩が説明を足した。「パソコンに取り込んだ方が本体で、もうメモリーカードの写真は予備だと考えて」

「消えちゃうんですか」

「何年先かはわからないけど、フラッシュメモリのデータは永遠でわないわ。メモリーカードを沢山収納するアルバムが売ってるけど、私からしたら意味不明ね」

 相変わらず辛辣なニコ先輩だった。

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