追憶


「ああ・・去年私が見つけたトンビマイタケ・・今年もキノコ採りに行けるかなあ。」

ときよみさんが言う。

「あそこは車で行ける場所だから、ぜったい連れて行くよ。」

私がそう答えると、きよみさんが嬉しそうに微笑む。

その笑顔を見ていると私は泣きだしそうになる。


しょうじき・・

きよみさんがどれくらい生きれるのか解らない。


でも生きている間は楽しく暮らしたい・・

いや、ぜったい楽しく暮らす。

それが結婚した時の約束だから。


何度も何度も自分に言って聞かせて・・

でも・・解っていても苦しすぎる。

堪え切れずに涙がこぼれてしまう。


その私の涙を見て

「あなたに泣かれてしまえば私はどうすれば良いの?・・」

そう言ってきよみさんが泣き出す。

そして気丈にも

「くそ!負けないよ。絶対最後まで楽しく暮らしてやる!」と言う。


そうだった・・

私がめそめそしてはいけない。きよみさんが当事者なのだ。


・・もお泣かないよ、きよみさん・・

・・きよみさんの前では涙は見せない・・

・・何があっても楽しく暮らす・・

・・それが僕らの戦いなんだ・・



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