スナックさいかわ オーナー豆ははこ編・第二回さいかわ卯月賞編

「うんうん、北海道産のいかのさきいか、いいですねえ。えんぺらも入ってますね、これ」

 うみべさんのスーパーは、歩くとちょっと距離がありますけど、これがあるんですか? みたいなお品があるから、つい、通っちゃうんですよね。

 今日は北海道物産展ですから、買いますよね、これは。


 あ、皆様こんにちは。

 お久しぶりです。

 スナックさいかわのオーナー、豆ははこでございます。

 アイドルの最可愛女子さんたちに差し入れしたり、こっそりといろいろしていたんですけどね、お店は久しぶりですよね。


 はいはい、今日はちゃんと夕方から営業しますよ。ママが昼からいるはずで、沙樹さんも夕方から来てくださるんですよ。

 だから、うみべさんのスーパーの北海道物産展に寄ってきたんです。夜に食べられるまかないを用意しておいてあげたいなあと思いまして。


 ほら。見てください。つやつやできれいなアスパラガスと、北海道と言えば、の豚丼のたれです。

 しゃぶしゃぶ用の豚ロース肉もありますよ。

 今日は、これでまかないを作っておいてあげましょうね。


 アスパラガスを洗って、かたいところを取って、斜め切り。

 あとは軽く茹でて……と。

 で、フライパンに油を熱してから、薄切りにした生姜とチューブのにんにく

 そこに、筋切りして片栗粉をまぶしたしゃぶしゃぶ用の豚ロースを一枚ずつ広げて焼いていきます。

 あとは、一度お肉を取り出して。

 それから、アスパラガスと豚丼のたれとをもう一度戻したお肉と混ぜるだけ。

 だけ。なのですが。

 あれ、茹でたアスパラガスが減ってますね……。


 あら、うみべさん。

 いらしてたんですか? 今日は沙樹さん待ちですよね。

 ええ、そうですよね。

 沙樹さん、今日は夕方からいらっしゃるから。

 夜に、まかないを召し上がってもらおうと思ってたんですよ。


 あれ、じゃあ、鍵が開いてたけど、ママはどうしました? 奥にいるんじゃないんですか。

 え、屋台? 餃子の屋台が通った? 

 焼き芋でもラーメンでもなくて。『餃子~』の声で、ママ、飛び出していったんですか!

 あ、だから、ラー油に醤油にぽん酢にお酢に、ケチャップ、マヨネーズ……。餃子待ちの調味料でしたか、それ!

 すみません、ご用意させちゃって。

 ええ、アスパラガス、マヨネーズでも、なんでも付けて、どうぞ召し上がってください。

 豚丼もですか、はいはい。

 追加でアスパラガス、茹でますからね。大丈夫ですよ。

 アスパラガス、おいしいですか。

 うみべさんのところのスーパーのお品、いいですからね。


 あとは、じゃあ、そら豆も茹でちゃいますか。ちゃんとさやつきのやつです。


 あれ、今度は焼いた豚ロース肉が減ってる。


 うわ、今度は、ママですか!

 生姜と蒜しかしてませんよ? それ。豚丼のタレとからめるつもりでしたからね!

 え、豚肉にはビタミンB1、疲労回復だから、日本酒と一緒にアミノ酸、ビタミンB2を。それから生姜と蒜で免疫力向上も、で、大丈夫、って。

 ああ、餃子の屋台さんには会えなかったんですね。

 で、日本酒は『久保田』ですか。いいですね、淡麗辛口。


 ……ちょっと待ってください。それ、『久保田』は『久保田』でも、『千寿』じゃなくて『萬寿』じゃないですか! 

 それなら、昼酒じゃなくてせめて夕方にしましょうよ、ちゃんと肴を合わせて。

 そうだ、こちらの『久保田』にしなさいね。こちらは昼間に合いますよ。

 え、甘酒じゃないかって。

 そうですよ、『久保田 こうじあまざけ』。麹でできた甘酒です。


 うみべさんはどうぞ、この『萬寿』を。

 ママが升にいれちゃいましたから、どうぞどうぞ。

 あ、豚丼はちゃんとママの分も作りますからね!

 そら豆も、って。

 お二人とも、聞いていらしたんですか……。


 え、ママと、うみべさん。

 餃子の口なんですか。冷凍ならありますよ。宇都宮と浜松のどちらにしますか。

 うみべさん、浜松、モヤシ付き?

 分かりました、ひげは抜いて、たくさん茹でますよ。

 そら豆は、そうです、莢つきのやつですからね。

 いいものを仕入れて頂いてありがとうございます。

 はいはい。

 ちゃんと、そら豆も莢から出して、切り込み入れてきちんと茹でますよ!


 あと、豚丼は沙樹さんの分も、そら豆はほかのお客さまの分も。ちゃんと残しておいてあげてくださいね? 

 お願いしますよ。


 あ、ママ、餃子を食べるときの瓶ビールは、青島でもアサヒでも地ビールでもいいですけれど、二本までですからね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る