第二部 運命を廻す者 兄・ラインハルトの刃 

第16話 天使狩りの追跡

第二部 運命を廻す者 兄・ラインハルトの刃 


「ハデス様」と、冥王ハデスの前にひざまずく女が二人いた。

「顔をあげよ、スキュラ、エキドナ」と、ハデスの低くてしゃがれた声がする。

「天使狩りの成果を発表します。この1年間で、3人の転生した天使を抹殺することに成功しました。抹殺した天使の名は、天使ゲホレイ、天使エギオン、天使アナイズ・・・」

「第7天の館の護衛の生き残りを2人殺ったか。でかしたぞ、二人とも」

「お褒めにあずかり光栄です、マイマスター・ハデス様」と、魔女スキュラが微笑む。

「次のターゲットはもう決めてあるのか?その調子で、ドンドン頼むぞ」と、ハデスが低く笑う。

「はい、早速。リストの下の方にありますが、これは世にも珍しい・・・双子の天使、通称「魂(ツイン)の(フ)片割れ(レーム)」と呼ばれていたという、天使ガデルとレファです。これはおもしろくありませんか??」と、魔女・エキドナ。

「だが、その気配は今までついぞ分からなかったはずでは??」と、ハデス。

「はい、ですが、最近、ガデルとレファの気配のする物体が、移動しているとの報告を、下級悪魔から受けました。このチャンスを逃す手はないかと・・・!!」と、魔女スキュラ。

「そうだな。魂(ツイン)の(フ)片割れ(レーム)か、懐かしいな・・・久しい。まだ生きていたとは、な。じっくりいたぶって殺してやれ」と、ハデスが微笑む。

「はっ、ハデス様」と、魔女二人が会釈する。そして、抹殺リストの羊皮紙をもって、姿を消した。

「ふふふ・・・魂(ツイン)の(フ)片割れ(レーム)よ、まだそなたたちは一緒にいるのか・・・??だが、このハデスが、すべてを無にしてやる・・・安心しろ、もう二度と現世によみがえれぬよう、徹底的に殺ってやる」と、ハデスが言った。


 その頃、ラインハルト・ファニタ・ハルモニア、そして不死鳥のプラトンの一行の旅は、すでに3週間目に入っていた。

 車を乗り継ぎ、リマノーラから、リラへと旅を続けていた。

 その日、検問があり、一行は大渋滞に巻き込まれていた。運転手のラインハルトが、舌打ちする。

「名前と出身地、他旅の行先を」と、衛兵が尋ねる。

「パスポートです。東リラを目指しています」と、ラインハルトが、やっと自分の番になって、めんどうそうに言った。

 とたん、衛兵の顔がさっと変わり、

「お待ち申し上げておりました、ツインフレーム・魂の片割れ様ご一行」と言ったのだった。

「なに!?!?」と、ラインハルト。

「シールドをはれ!!」とラインハルトが言う前に、ラインハルトたちの乗っていた車が大爆発を起こした。周囲2,3台の車が巻き込まれ、炎上する。

「死んだか」と、その衛兵がくっ、くっ、とおかしそうに笑う。

「アーネト・ヘラーク・シュウ(風)・カルフ!!」と、ハルモニアがその衛兵の背後を瞬時にとった。土煙ともうもうとあがる炎の中から現れたハルモニアは、そのまま「清め(クラ)る(ルス・)風(ヴェント)」と言って、敵の首をかき切った。

「ファニタ、大丈夫か!!」と、ラインハルトが、炎の中からファニタを助け起こして言う。すんでのところで、3人は逃げおおせたのだった。

「悪魔にはうってつけのワザだろう」と、ハルモニアが言って、シュっとシャイン・ソードを構えなおす。

「そうだな・・・うってつけだろうよ」と言って、その悪魔の胴体がむくりと立ち上がり、頭部を手で持ち上げ、首にくっつけた。多少変な向きをしているが、うまくくっついたようだった。

「貴様、名乗れ」と、ハルモニアが剣を突きつける。

「我は下級悪魔・ケルシュ。元堕天使・ラミエルである」と、その悪魔がケラケラ笑いながら言った。

「天使狩りの刺客と見受ける」と、ハルモニアが厳しく言う。

「その通り。貴様、天使ガデルの生まれ変わり、か・・・??そんな雰囲気がする。検問のとき、ツインフレームの雰囲気が近づいてくるのを感じた」と、悪魔・ケルシュ。

「さあな、どうだか」と、ニヤリとしてハルモニアは言ってのけた。コイツ、自分のことをノアさんと勘違いしてやがる・・・それならそのまま、囮として引き受けるのも悪くない、と思った。情報を聞きだす手立てにもなる。

「その雰囲気は隠せんぞ、天使・レファとガデル!!」と、ケルシュがけたたましく叫ぶ。

「ハルモニア君、自分にも任せろ!!」と、ファニタとプラトンを避難させ、ラインハルトがやってくる。

「ラインハルト兄さん、ここは俺に任せてください」と、ハルモニア。

「それより、一般人を避難させて!!」と、16歳からギルドに入って働いていたハルモニアが言う。

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