第20話

 焦りを抑えて車を降り、倉庫の扉に向かう。

「蒼空くん!」

 叫びながら扉を開けると、中は全体的に暗かった。ここではないのかと一瞬思ったが、そうではなかった。

 倉庫内の一画だけライトで照らされていたのだ。

五人ほどの人間がいて、その中には蒼空も含まれていた。

蒼空は縄で縛られてパイプ椅子に座っている。

その向かいでは、須藤と思しき男が刃物を持って蒼空に向けていた。蒼空の表情は良く見えないが、きっと恐怖に怯えているに違いない。

「お?やっと来たか。待ってたぞ」

 須藤がこちらを向いてニヤリと笑ったようだ。

「蒼空くんを離せ!」

 一行に近付き三笠が叫ぶと、蒼空もこちらを向いて何か呻いている。が、口にテープを貼られているため言葉にならない。

「フハハハ。二人とも揃ったな。それじゃ、ちゃちゃっと片付けますか」

「え?」

 三笠が一瞬身構えると、屈強そうな取り巻きの男たちがじりじりと距離を詰めてきた。蒼空に対しても同様に。

「さぁ!やれっ!」

 須藤の号令と共に、金属バットや鉄パイプを振り上げた男たちは、蒼空や三笠に襲いかかってきた。

 三笠は自身に向けて振り下ろされた金属バットを受け止め、バットの持ち主を蹴飛ばした。

相手は吹っ飛び、地面に体を叩きつけられている。そして、金属バットが床に落ちたカランという音が倉庫内に響く。

 一人倒した後に蒼空が気になり目を向けると、椅子に座り縛られている彼が今にも鉄パイプで殴られそうになっていた。

「蒼空くん!!」

 叫びながら、三笠は蒼空のもとに駆け寄り鉄パイプの男を渾身の力で殴る。油断していた男は、床に鉄パイプを落とした。よろめいた男に殴りかかられるが、三笠は難なく応戦する。そして、相手に最後に強烈なボディブローをお見舞いすると、相手はドサリと床に倒れ立ち上がれなくなった。

さらに他の男が蒼空に危害を加えようとしたため、三笠はその相手にも蹴りを入れ蒼空から離した。

 その後も三笠はくたくたになりながらも、二人の男を倒していった。三笠は刑事ということもあり、相当に強い。署内でも一番というくらいに腕っ節が強く、数々の修羅場を経験してきた。だから、今日のような打ち物を持った男たちなど特段に怖いわけではない。

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