【映画】『HERE 時を越えて』

■総合評価:★★★☆☆


■あらすじ

 アメリカの「ここ(here)」に設置された定点カメラを通じて、恐竜時代からコロナ禍に陥る現代まで、原始人や偉人、トンチキカップルに平凡な家族など、様々な人々が歴史が紡ぐドラマを見せる。

 

■レビュー

 試写で拝見しました。監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『フォレスト・ガンプ/一期一会』で有名なロバート・ゼメキス(あとは定期的に超絶カメラワークの『コンタクト』が話題になる人ですね)。主演はトム・ハンクスとロビン・ライト、これまた『フォレスト・ガンプ/一期一会』のコンビですね。そんな3人が組んだ本作は、またしても超絶技巧が光る作品です。何しろ時代がポンポン変わるのに、カメラはずっと動かないのですから。原作はマンガだそうで、ネットで読めたインタビューによると、1988年に最初のアイディアを基にした短編を創り、以後は作業→放置→作業を繰り返しながら、26年もかけて完成させたそうです。まさに努力の賜物。

 そんな原作を今度は生身の人間でやったのが本作です。ゼメキスと言えば『フォレス・ガンプ』の羽のシーンだったり、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で面倒なタイムマシーンの説明シーンを主人公のマーティンをビデオカメラを持つ記録係にすることで、ドク自らに説明させるなど、「どうやって撮ったの?」「その手があったかー!」な技術の人。今回もゼメキス・テクニックが爆発しております。

 若返りCGは今や珍しくないですが、本作ではリアルタイムで加工後の姿を確認できる体制を整えて撮影時したそうで、「顔は若いのに動きが老人」などの問題が一切なく、物凄く自然に見えます(これは俳優たちの演技力の賜物でもあります)。さらに時系列が思ったよりビュンビュン飛び交い、「定点カメラで撮影」という言葉からは想像できないほど、画面に動きがあって、思いのほか賑やか。お話も地味だけど良い感じです。主軸となるトム・ハンクスとロビン・ライトは、平凡な男女が付き合って、結婚して、子どもができて、親が老いてきて、揉めて、自分たちも老いてきて……という、こじんまりとした話なのですが、やっぱり演じる2人が上手いのあって、ほっこりな仕上がりです。

 ただ、個人的な好みとしては、最後のロビン・ライトの台詞は、もうちょっと違う方向にして、ビターな終わり方でも良かったかなと思うのですが、まぁ、ここは好みの範疇の問題でしょう。それと実験的な意味合いの強い作品で、技術力は堪能できますが、逆に言うと、そこに興味がなければ「変な撮り方をしているよくある話」の域は出ないかもしれません。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『フォレスト・ガンプ』的な、笑って泣いての大娯楽作とは言えませんが、“愛らしい小品”としては全面的にオススメできる1本であります。


■作品データ

・原題:Here

・制作年/国:2024年(アメリカ)

・監督:ロバート・ゼメキス

・出演:トム・ハンクス/ロビン・ライト/ポール・ベタニー/ケリー・ライリー

・日本公開日:4月4日(金)

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