ソウル・オブ・ジ・オリジン編 29話「絶幻の黎明核を繋ぐ碧天の華」

僕達の紋章眼は・・・この世界の人々が認識するアビスとは違うものから産まれた異物・・・でも、僕にはどうしても引っかがることがあるんだ・・・。


「なぁ・・・クレアトゥール・・・。」


「うん。」


「あのとき・・・ルルさんが僕達に伝えた魔王の伝承・・・この眼がアビスと繋がっていて、そして・・・魔王とも・・・繋がりがあるんじゃないか・・・?」


「うん、そうだね。この繋がりの因果は、僕らの力でなんとかすることもできる。でもね、そんなことをしたらこの星に巨大な逆説パラドックスが発生して、この時空諸共消えていくだろうね。それがこの時空の輪廻を作り上げた魔王の、最後の望みなのかもしれない。」


「そ、そんな・・・私達には・・・もう・・・戦うことしか残されていないのでしょうか・・・。」


「俺らが・・・やるしかないってのか・・・。」


「アタシ・・・アタシには・・・もう・・・!」


そう・・・そうだ・・・僕らには選択肢が残されてない・・・。僕らの日常を護るには・・・街のみんなを護るには・・・妹を・・・護るには・・・この世界の全てを護るためには・・・。


「・・・ねえ、クレアトゥール。」


「うん。」


「もし、もしだよ?僕らが・・・この輪廻の因果をもし・・・断ち切ることができたら・・・この世界はどうなるんだい?」


「・・・そうだね・・・うん。そのときは、君たちには最後の選択肢を、この世界の秩序を作り上げた存在から言い渡されるよ・・・・・・ごめんね、この先の未来のことは君たちの為に伝えられないんだ。」


最後の選択肢・・・もし魔王を倒せたとして・・・その先はどうなるんだ・・・?僕らの力はこの世界では忌み嫌われるもの・・・そんな力を持つ僕らを・・・世界は受け入れてくれるのだろうか・・・?


「さて、僕はまたこの世界の因果を組み上げるために、最初の仕事をしなくちゃね。大丈夫、これが最後だなんて思ってない。さぁ、君たちのその魔剣を、もう一度顕現させてほしいんだ。」


「・・・マルタ・・・レイン・・・リセル・・・・・・大丈夫だよ、僕は君たちを守り切る!そして歩幅を合わせ続けて、一緒にこの使命を乗り切りたいんだ・・・!だからさ、僕がいつでも手を貸すから、何度だって立ち上がろうよ!」


僕はみんなに優しい笑顔を向けて、アイオンソードを出現させた。


「リヴァン・・・そうだな・・・お前がやるんだって言うなら、ここで挫け続けているなんて選択肢は、俺だって取らねえよな・・・!」


「私も・・・もうずっと・・・ずっと昔から、あなたの横に立って、歩幅を合わせようってずっと頑張ってきました!だから私も、皆さんとずっと一緒に居たいです!」


レインとマルタも、その眼に決心の炎を灯してくれた。あとは・・・。


「・・・!あ、アタシは・・・それでもアタシは・・・この一歩が・・・ただ手を伸ばせば届くアンタたちに向けれる勇気なんて・・・。」


暗い表情のままうつむき続けているリセルに、レインは肩に手を、マルタは背中を押し、僕は手を向ける。するとリセルは、少しだけ明るい表情になって。


「大丈夫だ、リセル!俺はな、学生時代からお前がずっと俺を気にかけてくれていたことを今も感謝し続けているんだぜ!俺の家のことや種族のこと、自分の置かれた立場によって荒れていた俺を、バカと言いながら一緒に居てくれて、そして一緒に笑ってくれたことを・・・。だからどんな状況になったって、俺はずっとお前の傍に居続けるさ!」


「そうですよ!リセルさん!あなたは私がある人を探していたときに、何処に声をかけても相手にしてくれなかった口下手な私に優しく声をかけてくれて、そしてその時にあなた達と一緒のパーティーの・・・リヴァンさんと巡り合わせてくれたリセルさんに今でもずっと感謝をしていますよ!そして・・・レインさんとリセルさんが私のあの相談を受けてくれたことも・・・ずっと、ずぅーっと感謝していますからね!」


「レイン・・・マルタ・・・!でも、それでも・・・アタシは・・・!」


僕はゆっくりとリセルの手を掴んで優しく引っ張る。レインはリセルの肩を支えてくれて、マルタはリセルの背中を押してくれている。そんなリセルは徐々に明るい表情になっていった。


「行こう!リセル!そして、レインとマルタも!」


「おう!」「はい!」


「・・・バカね・・・本当にバカよ・・・・・・えぇ・・・アタシも、アンタたちと歩幅を合わせて進み続けるわ!アタシもアンタたちを守り続けるから・・・アタシのことも・・・守ってね・・・!」


「あぁ!」


そして、四人で魔剣アイオンを召喚して天へと掲げると、魔剣の矛先から光の柱が現れて、空から徐々にこの空間が崩壊していく。眼の前のクレアトゥールの星が徐々に消えていく中、彼の声が聞こえてきた。


「またね、オリ・・・ううん。リヴァン、マルタ、レイン、リセル!」


「あぁ・・・またね、クレアトゥール!」


光が空間を埋め尽くすと同時に空間は崩壊して、僕らはゆっくりと、深淵へと落ちていった・・・。


ただゆっくりと落ちていく中、そう、ほんの一瞬だけ、少し前に視た、あの実験施設の情景が紋章眼から見えて、声が聞こえてきたんだ。


「やはり、ミシカルアンセスターと邂逅を果たしたか・・・・・・クレアトゥールよ、いつまで我を苦しめ続ける・・・どうやったら我はあなたの元へたどり着けるんだ・・・!我は・・・どうやったら後任者たちを助けられる!どうやったら幸せにできるんだ!あぁ・・・許してくれ・・・許してくれ・・・許してくれ・・・許してくれぇっ・・・!」


眼の前の顔の認識できない・・・あの謎の男・・・創造主は・・・何故か僕らに謝り続けている・・・。


「アレは・・・一体・・・??」


その疑問を抱きながら、深淵の、底のまた底へと僕らはたどり着いた瞬間・・・気がつくと僕らは秘封の間の中で、夢幻装魂の攻撃によって目の前の封印の祠がバラバラに砕け散っていった。その後すぐに、この街全体にゴゴゴゴという地響きが鳴り響き始めた。


「お主ら!外へ出るのじゃ!」


クァトロさんは焦りの表情を浮かべながら封印の間の外で空を見上げている。僕らも急いで外に出て空を見上げると、街の至る所から淡い水色のマナが溢れ出して、空から落ちてきている隕石へと流れていき、隕石を跡形もなく粉々に砕いていった。


「よ、良かったのじゃぁ・・・これもまたヒューマに報告かのう・・・。」


街中の混乱がなくなって、辺りの人たちも安堵し、自分たちの命が助かったことを涙を流しながら分かち合っていた。僕らも色々と頑張ったから、みんなで何か労いの宴をしようと、お互いに目くばせをしていた・・・・・・でも、これが終わりじゃなかったんだ。


突然、空から誰かの視線を感じた瞬間、僕らの右目の紋章眼が勝手に発動して、違和感を感じながらも四人でゆっくりと空を見上げると、消えた隕石から溢れ出したマナが徐々に形を帯びていって、そして、僕らの右目の紋章眼と同じ形の巨大な紋章が、空に浮かび上がっていた。その紋章から、ある女性の声が聞こえてきた。


「やはり現れたようだな、オリジンよ。」


「誰・・・だ・・・?」


「我の名はオルトブレーン、この世界を制し、魔王としての使命を全うする者。」


「魔王・・・オルト・・・ブレーン・・・!?」


僕らは、僕らが倒すべき相手の存在が、本当に伝承に存在している者だと、今ここで思い知らされた、いいや・・・きっと気付くことを避けていたのかもしれない。僕らが対峙しないといけない相手は、魔王。その魔王は今の僕たちでは、もう手の届かない頂きの先に立っている、その時、そう感じたんだ。

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