「「「「夢幻装魂！！アイオン！！」」」」

僕らは夢幻装魂と紋章眼を発動させて、武神の半身を身に纏うと、聖騎士は右足で地面を蹴り出すと同時に、剣を振りかざしながらものすごい速さで突進してきた。僕はその動きに合わせるように剣を構えて、攻撃を受け流す！

「エクセレントパリィ！」

剣と剣がぶつかる瞬間、普通だったら剣から伝わる衝撃を腕で感じるところだろう、だがこの時、僕の剣からは何も伝わることはなかった。一瞬脳がバグったような感覚に襲われた瞬間、武神に護られていない部分を狙われて、聖騎士の剣は僕の横っ腹を切り裂いていた。

「グアッ！？なんだコイツ！？何かがおかしいッ！？」

「リヴァン！？くっ・・・！マルタ！リヴァンに回復魔法をお願い！！アタシは弓でッ！！」

聖騎士はそのまま僕の横を走り抜けて、後衛に居るマルタに向かって突進していく。僕は咄嗟にマルタの方向へ急ごうとしたが、腹部の痛みで少しだけ反応が遅れてしまった。

「マルタァァァァ！！グッ・・・！くっそォォォォォ！！」

「天格癒啓・無創ふ・・・だめッ！？間に合わッ・・・！？」

聖騎士の無慈悲な一撃が今にもマルタを切り裂こうとした瞬間、金属音がぶつかり合うような音が空間に響き渡って、レインが武神の半身の片腕で聖騎士の剣を止めていた。

「やっぱりなぁ・・・想像通り単純な前衛ではなく、最も厄介な後衛の回復役を狙うよなぁ・・・！てめえ自身が意識があるかどうか分からねえが・・・目標はなんとなく予想はしていたさ！！オラァァァッッ！！」

「レインさん！！」「レイン！！」

「地導火之迦具土・慟哭波紋（ちどうひのかぐつち・どうこくはもん）！！」

レインの拳から放たれる龍のような形の炎は、聖騎士を噛み砕きながら吹き飛ばしていった。だけど、聖騎士にはあまり攻撃が通ってないようにも見える・・・。

「リヴァン！！あいつの攻撃は武神を切り裂けない！！だがあいつはそれを理解しているからこそ、武神が纏っていない部分を狙ってくるはずだ！！」

「・・・！そういうことか！！」

「マルタ！！今のうちにリヴァンを回復してやってくれ！！リセルは俺のサポートトを！！リヴァンが万全の体制になったら、お前らも援護を頼む！！」

「分かったわ！マルタ、リヴァンをお願い！」

「はいっ！！」

レインとリセルはさっきの技で吹き飛ばされた聖騎士の元へと走り出し、マルタは僕へ近づいて回復魔法をかけてくれた。

「デボーションヒール・・・！」

僕の外傷はマルタの回復魔法によって数秒で跡も残らずに治っていった。

「ありがとう、マルタ・・・。」

「いえ・・・いつも皆さんに護られてばかりいて、さっきも咄嗟に回復もできなくて、本当にごめんなさ・・・。」

僕は謝ろうとするマルタの頭に手を当てて、笑顔を向けた。

「大丈夫だよマルタ、君はいつだって僕らを守ろうと必死になってくれていた。マルタの優しさは、僕らにもしっかり伝わっているよ！だから僕らは何度でも立ち上がって君を守るさ。だから、後ろは任せたよ！マルタ！」

「リヴァンさん・・・・・・分かりました！」

僕はその場から立ち上がって、聖騎士と戦い続けている二人の元へと駆け出していった。

「レイン！リセル！すまない！待たせた！！」

「リヴァン！！遅えよ！！こいつ・・・二人がかりでも手強くて・・・ッ！！」

「ほんっと、隙がなさすぎて！！どう対処したらいいか思いつかないのよッ！！」

聖騎士は二人の攻撃をギリギリで交わしながら適切な間合いで二人を圧倒していた。あいつ・・・目が何個もあるようなぐらい、二人の攻撃を読み切っていないか！？だけどそんな疑問なんて捨て去ってしまえ！僕ができることは、急いで二人の援護に回って敵が対応しきれない攻撃を浴びせ続けるだけだ！

「私の大切な仲間たちは、もうこれ以上傷つけさせません！純粋なる清き聖火よ、万象を焼き尽くし、悪しき者を葬る力をもって、千鉄をも穿つ刃と化せ！セイクリッド・フレイム！！」

マルタから発せられた補助魔法が、僕らの武器に炎を纏わせ、さらなる力を与えてくれた。これなら・・・いける！！

「サンキュー！マルタ！これでもっと全力をぶつけられるぜ！！」

「ったく、こっちはあんたに合わせるのも大変なんだからね！まぁだけど、これは好都合よ！！」

「うん！やるよ！！」

僕は剣を構えながら武神を纏っている右足で踏み込んで、雷の速さで聖騎士に切り込む。一瞬で間合いに入って、炎を纏った剣にバチバチと鳴り響く雷を混ぜ合わせて横っ腹を切り裂く！

「お返しだ！！炎雷刀・天国剣・鳴響（えんらいとう・あまくにのつるぎ・めいきょう）！！」

僕の剣が聖騎士の横っ腹に当たりそうになる瞬間、剣の部分の空間だけが一瞬だけねじ曲がって、攻撃が外れていた。

「なっ・・・！？こいつ・・・まさか・・・！？」

そしてまた、聖騎士は僕の武神で護られていない左足と腕を切り裂く。

「ガァッ・・・！！」

「リヴァンさん！！みんなを守って！！救癒開放・女神ノ吐息・黎聖（きゅういかいほう・ゴッデスブレス・れいせ）ッッ！！！」

この空間に現れた薄緑色の巨大な魔法陣から堕ちてくる無数の光の羽は、今にも切断されそうな僕の左足と腕を一瞬で回復し、聖騎士は光の羽によって動けなくなっていた。

「ありがとう・・・マルタ！いくよ！！レイン！！リセル！！」

「あぁ！！もういっちょやるぞ！！リセル！！」

「あんたに言われなくても、理解っているわよ！！ハァァァァァ！！」

「豪炎鬼・地導拳・焼陽（ごうえんき・ちどうけん・しょうよう）！！」

「冥破炎弓・夕霧・惨夜（めいはえんゆみ・ゆうぎり・ざんよ）！！」

レインの両拳から発せられる赤い炎が太陽のような朱色に染まっていき、目にも止まらぬ連続パンチを繰り出す技と、リセルの弓から放たれる闇の炎を纏った矢が分散し続けて聖騎士を無限に貫き続ける、二人のこの激烈な攻撃の嵐に対しても、聖騎士は攻撃の手を止めることはなく、こっちの全ての攻撃の一部を自身の鎧で受けきり、二人に反撃の刃を向け続けている。二人の身体は刃によって切り裂かれるが、マルタの魔法によって一瞬で再生し続けていた。

「クッソ・・・！リセル！！攻撃の手を緩めるなァァァ！！向こうにとってもこれはジリ貧の戦いなんだ！！」

「だからって！！いくらマルタの回復魔法があっても・・・こっちだって手一杯なのよ！！」

「レイン！！リセル！！恐らくもう紋章眼の技を当てるしかないよ！！」

僕は紋章眼にマナを送り、右手を前へと向ける。それと同時に二人も紋章眼を輝かせ始めた。

「ソレを待っていたぜ！！」

「アンタはいつも遅いのよ、まったくね！！」

「僕に合わせろ！！天国・絶元雷轟・鳴円（あまくに・ぜつげんらいごう・めいえん）！！」

「任せろ！！地導火之迦具土・慟哭波紋（ちどうひのかぐつち・どうこくはもん）！！」

「ったく・・・この強化された魔法はあんまり使い慣れていないってのに！！輪墓・殲滅那由汰・壊廻（りんぼ・せんめつなゆた・かいね）！！」

レインの拳からより一層大きな炎の龍が現れ、リセルの無数の幻影拳には黒いマナが纏っていて、一発一発の威力が以前よりも格段に強力になっていた。僕は二人の攻撃が合わさる瞬間に、雷を聖騎士へと落とす・・・。

「「「暁闇雷光《ぎょうあんらいこう》！！！」」」

太陽の豪炎、宵闇の黒陽、そして・・・全てを砕く雷轟の閃光！！この技を避けきることは・・・目の前の聖騎士はできないはずだ！！全ての魔法が合わさる瞬間、朱く燃える黒いマナの結晶が辺りに散らばって、バチバチという音を響かせながら消えていった。全ての攻撃を食らった聖騎士の鎧は徐々に粉々に砕けていって、兜も砕けて、素顔が顕になる。

「やっぱり・・・そうだよね・・・。」

聖騎士の素顔は、マルタと瓜二つの女の子だった。ただその目は死人のように虚ろな闇に飲み込まれて、まるでこの世の全てに興味を失くしているような・・・生きることを諦めている目だった。

僕らは一瞬だけ、女の子に対する攻撃の意識を消した瞬間、女の子の右目に紋章が徐々に刻まれていっていた。

「・・・！？ま、まずい！！みんな！！逃げっ・・・！？」

「えっ・・・！？」「なっ・・・！？」

「・・・空域妖喰・禰（くういきあやはみ・かたしろ）・・・。」

僕ら三人の武神の纏っていない左半身の部分の空間が捻じ曲げられている・・・！？やっぱり僕の剣が当たらなかったのも・・・あの謎の紋章眼の力によって逸らされていたのか・・・！？女の子の魔法によって、僕らの左半身は一瞬にして消し飛んでいた。