第23話 アタック1回目と反省会

地下洞窟は広くなったり狭くなったりしながら、道が不自然に分岐している。

「うーん、アリの巣かな?」

「だとしたら幼虫の部屋とか食料庫とかありそうだね」

「ダンジョンだよ?宝の部屋があるはず!」


不自然に分岐した先は、見たことのない扉だった。

「残念、アリの巣ではなかったか…」

「ドアがあるってことは部屋なのかな?」

「お宝部屋かな?モンスター部屋かな?ワクワクする!」


そっと触れると扉は消えた。

部屋の中は薄暗くてよく見えない。

「いっちばん乗りー♪」

「あ、ゆきちゃんダメ!!」

「何か飛んで来る!避けて!」


羽の生えた魚が四方から飛んできた!

「こんなこともあろうかと!」

ゆきちゃんが蜘蛛の巣ネットを投網の様に投げた!

「大漁!」

魚が陸揚げされた!


「まさかの食べ放題部屋だった!踊り食いレストランかな♪」

「…ちょっとタイム。反省会を要求します。」

「同意。どんな時はどうするか、みんなで確認しよっか。」

大人は気が気じゃないよ。飛び出しダメ絶対!絶対にだ!!


「まず、今回は魚だったからよかったけど、そうじゃなかったらどうなってたと思う?」

「ん?何が来ても落とせるよ?」

「ゆきちゃんの苦手な完熟リアンの実でも?」

「うっ。」


「リアンってあのトゲトゲで中トローリのくっさい実?果物の王様だっけか?」

「うん、例えばね。叩き落としたらどうなるか分かるよね」

「うん…」

「思いもよらないことだってあるんだよ」

「…ごめんなさい。」


「ちゃんと謝れて偉いね。ゆっくんが強いのは知ってるけど、本当に強い人は、無駄に叩いたりしないでしょ?トラップわざと踏んだりしないよね。強くてカッコいい人は、落ち着いて動くんだよ。」

「…ごめんなさい。」


「ゆっくんはカッコいいから落ち着いて行動できるよね?」

「うん。気をつける。」

「でも、ゆきちゃんの蜘蛛ネットはすごかったよ!ちゃんと準備してきたのは流石だね。しっかり魚全部獲れてて、いい反応だったよ。」

「そうそう、心配して損しちゃった。今度は余計な心配かけないでよ?」

「うん、気をつける!」


こんなもんかな。

叱る時に叱るのは大人のお仕事。

ゆきちゃんの事を大事に大事に思ってるからね。

僕に捕まった時みたいに大怪我して動けなくなるのは嫌だよ。


仲間の気持ちに気づくのは大人への第一歩。

僕らはいいパーティになれるだろうか。

いや、きっとなる。お互いを大事に思う気持ちがあるから、強くなる。


「ところで、この魚どうしようか。」

「うーん、素性が分からないものを食べるのは危険だよ。本物の魚かどうか分からないし、ダンジョンの一部だったらお腹の中から攻撃されたりするんでしょ?」

「しないよう。敵を倒したご褒美に、イイモノもらえるんだよう。」

「ネッターさん分析魔法で何かわからない?」

「ああそうか、ちょっと見てみるね」

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