魔導士とダンジョンとスライム

第21話 不思議のダンジョンが現れた!

「ゆきちゃんさ、最近言葉遣いがジャンクになってない?」

「あーそれ私も思った。ゆっくんなんかラノベっぽくなった。」

「へへー、実はこないだライブラリ見つけちゃって、観てたんだ。塔の入口近くの大部屋の隅っこで、延々アニメ流れてて。」

「休憩所にキッズスペースでもあったっけな?」


「何か面白いのあった?」

「うん、転生したらダンジョンだった件!今ハマってる。超面白い!俺も冒険したいー!無双したい!スライムと遊びたい!」

「あれかぁ。結構人気のヤツだよ。異世界に転生して、気づいたらダンジョンで、中に色々作っていろんな種族を住ませる感じの話。冒険者を誘い込んで活動エネルギーを吸収して成長するの。バトルシーンがすごいよ。」


「スライムってファンタジーだよねぇ。いいよね、プヨプヨでモチモチでヒンヤリでツルンって」

「いや、食べないからな!」

「触感だよ?食べたりしないよ」

「食感!?ネッター的には珍味なの!?あんな可愛いのに」

「何か噛み合ってない気がする。触り心地だよ?」


「スライム私も好きだよ。異世界ものの定番だよね。ここにもいないんだ。」

「うん、あんな動きができるのに頭がないとか、生物では成立しないよ。」

「魔力で遠隔操作したらどうかなー。本体は別の所にいてさー。」

「そんな繊細な制御してたら動けなくて襲われそう。」

「ロマンがないー。おっさーん。」


そんなやりとりしていたある日突然、

ダンジョンが現れた!


森の中に突然生えてきた、地下洞窟への入口っぽい何か。

昨日まではなかった。それは間違いない。


「キター!!ダンジョンきた!うそマジで!どうしよう!」

「落ち着いて、落ち着いて。まず所轄の地理部門に通報して…」

「通報より先に、中を確かめないと!夢じゃないよね!」

「行きたいなら私付き合ってもいいよ」

「わぁーい!」


ゆきちゃんが舞い上がっている。

子供らしい反応だけど、大丈夫かな。

世の中、美味しい話はほぼトラップだよ。


「おっべんとう♪おっべんとう♪」

ゆきちゃんはせっせと幼虫の頭を異空間に詰め込んでいる。


「それ、ツバサヘビの領域魔法?すごいね、ゆっくんも使えるの?」

「こないだ見て、かっこいいから練習した!ちょっとだけできるようになったの」

ツッコミどころはそこかな?


「この前ツバサヘビがくれた幼虫だよね。何で頭だけあるの?」

「アレクサ、体の柔らかい所だけ食べて捨てちゃうけど、俺的にはこっちが魔力多くて美味しいから、もらって保存庫に置いてた。欲しかったらまだあるよ?」

「いや気持ちだけありがとう。」


「おっやつ♪おっやつ♪」

ゆきちゃんはいそいそと小さい金平糖を取り出した。

「私も干し肉出してこようかな」

「僕も飲み物だけ持って行くかな」


みーちゃんはそっと見守ってサポートする方針のようだ。

確かに、子供がウキウキしているのに水を差すのは良心が咎める。

現地を見て納得させてからでも遅くないよね。

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