17.防衛戦

 乱戦になりながらも、統率の取れた赤雛学園の生徒。指揮を取るのはこの人、エリゴールだ。


「小田君たちは大丈夫かなー、心配だなー」


 龍造寺の先兵は、お世辞にも統率が取れておらず。そのうえ雑魚ばかり。


「欠伸が出ちゃうな」


 後続が気になる、あちらから嫌な匂いがするのだ。いつ動くのだろうか?


 そろそろ前衛の生徒たちが疲れた頃だろう、後衛と入れ替わらせるべきだな。


「エルちゃん、休ませた方が良くない?」


「もう伝令を出しましたよ」


「流石、盤上の棋士の名は、伊達じゃないね」


「誉めないでください、気持ち悪いです」


「酷い」


 まさか味方から精神攻撃がくるとは、いつものこととはいえ、傷つくよな。


 前衛と後衛が切り替わる瞬間、龍造寺の後衛から三人が飛び出す。


 行くとしよう、このままでは前衛、後衛と全滅する可能性が高い。


「前衛、後衛下がりなさい」


 今まで喋っていたエリゴールは、すでに前線に立っていた。


 生徒たちを下がらせ、指揮官が前衛に出る異常な事態。


「ホント、怖いわ」


 遅れて前線に辿り着き、三人の顔がよく見えた。一人は、傷のある男。警棒使いの女に、身長がやたら高い男。


「お嬢ちゃん、私たち三人を貴女が相手するつもり?」


「そっちの雑魚二人は、知らない。可児水蘭、貴女の名前は知っている」


「お嬢ちゃん、よく知っているね。でも答えになってないよ。確かにこの二人は、私よりも弱いけど。お嬢ちゃん、蛮勇だね」


 対立する二人の前へ割り込む、こういう役回りは苦手なんだけど。


「そっちの二人は、俺がもらう。欲張りでごめんね」


「誰だい、アンタ」


「俺か?俺はただの佐伯」


「佐伯?知らんな。まあいい、相手してやりな」


「姉さん、了解です」


 エルちゃんは、雑魚だといったこの二人。今の小田君と立花ちゃんが、ギリギリ勝てるかどうかというレベルだろう。


「かかっておいで」


 佐伯のスタイルは、受け身である。技を見て返す。単純なことだが、技術とそれを可能とする肉体。


 しかしそれだけではない、奴は人間の体の壊し方をよく知っている。


 佐伯を単なる軟派な奴だと勘違いして、痛い目をみたという話はよくある話だ。


 あの程度の相手なら、佐伯で十分。可児水蘭に集中できるのは正直、有り難い。


 元々、統率も取れていないし。そのうえリーダー各を失えば、龍造寺の先兵は瓦解するだろう。


「お嬢ちゃん、名前は?」


「エリゴールだ、オバサン」


「オバ…貴女何歳よ、少し若く見えるからって、調子に乗らないで」


「私か?十四歳だ」


「十四!飛び級でもしたのかしらね?」


 会話の無駄だと、エリゴールは口を噤んだ。


 あーあ、出ちゃったね。エルちゃんの悪い癖が、会長いるときは、いつも猫被ってるけどさ。

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