13.雨戦争

 エンジン音は止み、高橋はバスから降りて辺りを確認する。


 高橋に続いて降りた城井、どうやら腑に落ちない様子だ。


「あの高橋会長、気になったことがありまして」


「何だ?」


 反応を示した高橋は、城井が口を開くのを待った。


「バスからも見えてましたが、何ヵ所か煙のようなものが見えて、あれは一体何なんでしょう?」


「あれは、私が呼んだ雨乞い師だな」


「どうして、雨乞い師を呼ぶ必要があるのでしょう?」


 雨が降れば、私たちだって視界が遮られ、予想外な不利な状況に陥る可能性だってある。


 それなのに雨を降らせる?


「有馬軍は、中条町で交戦中と言っただろ。あそこは、見晴らしがそれほど悪くない場所。この人数で動けば、すぐに気付かれる」


「ですが、雨降りますかね?今日の天気は、曇りでしたよ」


「そればかりは、天運に賭けるよ。それになにもしないよりも、何か一%でも可能性があるなら人事を尽くした方がいいだろ」


「参考になります」


「そうだったな、立花はまだ雛鳥だが、君主の器であることに違いはない。しっかり支えてやれよ」


「はい、言われずともそうします」


 若者は眩しいな、私と二つしか歳は変わらないというのに。


 未来がどう転んでも、納得できる生き方をしたい。


「なにボーッとしてるんだよ?」


 コイツ何を考えているんだ?今回の戦は、裏があると思う。龍造寺の裏で、手助けしている勢力がいるかもれない。


「いや、なんでもない」


 まさか小田に心配されるとはな、油断したか。


 こちらの動きは、間違いなく読まれていると考えた方がいい。襲撃も警戒されている筈だ、龍造寺の兵も精強で侮れない。


 雨はもちろんブラフだ、我々の一部の部隊での襲撃、からの龍造寺の本隊を叩く。


「今からお弁当を配りま~す」


「ルシファーさん、ありがとうございます。とても美味しそうです」


「今日は、奮発しちゃいました。大内さんの活躍に期待していますよ」


「これって…紅菊のお弁当ですよね。一つ二千円はするやつ」


「よくご存じで、これから辛い戦ですからね~。せめて美味しいものをと」


「お心遣い感謝します」


「いえいえ、お気になさらずに」


 ヒョイヒョイと箸で掴んで口の中へ、何の肉かわからないが、これほど柔らかい肉は初めてだ。


「うめーなこれ」


「美味しいですね」


「だが、那須のいつもくれる弁当も負けてないな」


「身に余るお言葉」


 ヒャーっ、小田様に褒められた。涙出てきそう、嬉しい。


「このお弁当と比較して、遜色のないレベル…私も食べてみたい」


 焼き魚に箸を入れて、ホンワカしながら味の想像をしている小笠だった。

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