第16話 心の一番柔らかいところ
次はひらパーだった。手を繋いだ。ここから手を繋ぐのがデフォとなった。
ユニバでは抱きしめてと言われたが、それは拒否し二人のうちどちらか一回ずつアトラクションを隣で乗った。僕はハリドリで意識が飛んだ。
「卒業したらコンカフェで働きたいの。いいお店知らない?」と、言ってどうにか部屋に来ようとした時もあった。その時は家には誰もいれないと断った。
パパがいる時にお邪魔したら部屋に来てと言われた。
「神棚みたいにアクアのグッズ飾っているから見に来てよ」
パパは何も言わなかった。役立たず。
ジャニケンは「大人になってお付き合いしたらいいよ」と、答えたがきっと悪手だ。
「写真は後でパパに送るからね」
「なーの携帯に直接送ってよ」
「本名バレるから嫌」
「なんで、なー誰にも言わないよ。いいでしょ、いいよね」
「これからもっと仲良くなってからでも遅くないわよ」
きっとこれも悪手だ。子どもはすぐに成長する。成人まであっという間だ。
「帰ろうか」
「二人が冷たいといいもん。私、ワーリオの家知っているもん」
ブラフだ。二人とも察した。
「今日はここまで、また今度遊ぼうね」
「私、行くから、ワーリオの家知っているもん。昨日だって、二人でお酒飲んだもん。なんでパパに電話しているの? 一緒に帰ろうよ、いいところ寄ってさ」
「あんまり聞き分けが無いと、パパ呼ぶわよ」
ジャニケンの声はいつも聞くより数倍も冷たかった。
なんで、なんでよ。そう言ってスンスン泣きだした。
「アンタの娘がワーリオの家に行って言っているけど、ま?」
ジャニケンは電話でマスターに訊ねた。昨日は一日家にいたと言った。
「なーちゃん、今正直に言ってくれたら許してあげる。正直に話してくれたら、私たちの体以外の何かをあげる」
知っている。このやり方。浮気した夫に奥さんが優しく問いただす時のアレだ。
「ワーリオの家は知らないし、二人とも大好き。一緒に旅行に行きたいし、尊敬とか憧れ以上の気持ちもある。なんで? 私すごい可愛いよ。肌のケアも欠かさずしているし、クラスの誰よりも魅力あるよ。二人が今現在も変な性癖でも受け止める自信があるよ」
「ホーロー。用意してあるでしょ」
「ロッカー」
「どこの?」
「案内する」
「ねぇ、なんで無言なの? なんで? 怒っているの?」
ジャニケンが触れて欲しく無いところになーちゃんが触れようとした。僕もそうだ。触れて欲しくないやわらかいところを触れられた。
「あんたがファンとして静かに見に来てくれたら歓迎するけど、マスターの娘さんと一緒に遊びに行くことはもうない。今日がラストだ」
「なんで、なー何も悪いことしてないよ。一緒に遊んで楽しかったじゃん」
駅のロッカー群の前に来た。少し大きいロッカーの前に立ち僕は無言でロッカーを開けた。
「これが最後のプレゼント。サイン入りのグッズとチェキ」
「最後ってなんで」
「僕たちは特殊じゃないんだ。僕たちは」
「私たちは」
「普通の人間だ」
謝るからごめんなさい。嫌だ。
何かをわめいていたが、マスターが来て腕をつかまれても抵抗は続いた。マスターが車に乗せると、静かになった。
「私、子ども相手にやりすぎたかしら」
「どこかで一線を引かないといけなかった。それが今回だった」
「疲れたからどこか飲みに行きましょう。あのワーリオ潰した店なんかどう?」
「多分出入り禁止だよ」
マジで出禁だった。電話がかかってきた。嫌そうな顔をジャニケンがしたと思ったら、スピーカーオン。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます