第14話 保護者に関わらず飲み屋で出来上がったクソ野郎
「洋二、帰ったか。おりゃ? お友達と一緒か?」
「違う。コイツが飲ませたんだ」
うんともすんとも言えない。事実だからだ。
「アンタ名前は?」
「ホーローです」
「アンタがフォローさん」
「ホーローです」
「フォローさんが親切にしてくれたって孫が言っていたって」
おそらくジャニケンの采配だ。ここまで想定していたのなら末恐ろしい。
「いや、何も出来ませんでした。ここに運ぶしか、家を知らなかったので」
「正解、大正解。うちの男は決まってお遊びを繰り返すから、ここに括り付けてんの。うちの末っ子は何をしたんだい」
「おい、ホーロー。止めてくれ、そんな大罪は犯していないはずだ」
「うちの孫を放って、居酒屋に連れて行って酒飲んだだけでも大罪だよ。あと兄ちゃん、あんた末っ子潰したって聞いたけど、本当?」
おばさんの目が鋭く刺した。これ本当のこと言わないとくくられる。
「正しく言うなら懲罰的な意味で潰すように他の人にお願いしました。その間、仲間が対処方法を講じてくれる確信があったので」
「でも潰したことでうちの孫が不安になった。よし、兄ちゃん。シャワー貸してやるから括り付けの下に行きな。信用して手錠は勘弁してやる。こうちゃん上げちゃって」
「嘘だろ。なんでこんなクソと隣同士にならないといけない」
「はーい、巻きますね」
「こうちゃん、止めてくれよ」
こうちゃんは肩幅のがっちりとした。ジャニケンとは違うタイプの巨漢だ。ジャニケンはそもそも身長がでかい。
このこうちゃんは筋肉だけの男だ。丸い身体、服の上からも分かる重量感。そのこうちゃんはさっさとワーリオを簀巻きにして立てていく。
根本はどのうで固めてあった。最近置いてあったものではないだろう。こうちゃんはかなりの枚数のたすきから一枚を取り出し、おばさんに指示を仰いだ。
「保護者に関わらず飲み屋で出来上がったクソ野郎」
こうちゃんはワーリオの横にはしごをかけ、ワーリオの肩にかけた。
「で、アンタはこれ」
畳を渡されて二人の足元に座れと言われた。
「アレと違って三十分でいいよ。中々恥ずかしい経験になると思うわよ」
渡されていたボードには「その保護者を潰しました。どうか小突かないで下さい。防カメつけています」
三十分が長く感じた。じろじろ見ていく市場の関係者、まだ早朝とあって人は少ないが三人の罪状を見て、なるほどと去っていく人々。これは恥だ。
「おかみさん。これは中々だね」
「ひどいもんよ。娘を放置して」
「あれは新キャラかしら」
「ええ、末っ子を潰したのを依頼した男よ」
「新キャラ。アンタはどうやって来たんだい」
他の関係者から名前すら呼ばれなくなった。
「知人の軽トラで、運転席の後ろに括り付けて」
「あと十分残っているけど、勘弁してやる」
まだ二十分だったのか。
慣れているのだろう。ワーリオは首を上手く動かして猿ぐつわを外した。
「な、もう恥は受けたんだ。母さん、いいだろ」
あと、一時間だけで済ます。そう言われて多分兄貴に自慢する。人間ちっさいな。
「何分さらしたんだい?」
「大体十分ほど」
「朝だからね。アンタ今喜んだだろ」
「滅相もない」
「二時間」
「やめてくれ。始発が来るじゃないか」
「残念もう来ている。通学途中の学生にまじまじ見られるんだね。じゃ、フォローさんシャワーを貸してあげよう」
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