第12話 大黒鮮魚店
えぇ、これに触らないといけないのか。ワーリオの自宅知らないんだよな。
こういう時は仲間に連絡。チョーさんは多分女の子と過ごしている。酔うと異性に対する制御無くなるんだよね。
これがチョーさん自身はファンを食っているとは思っていないのに、ファン同士ではいざこざが起きる要因なのである。ありがちだが、当然チョーさんは覚えていない。
ここで目を覚ますとチョーさんに理性が働いて、すぐにファンとのまぐわいを止めさせても女の子が傷つく可能性大なので、女の子の為にここはチョーさんには電話しない。
チョーさんと同じバンドのタンズさん。苦手なんだよな、話さない。もう何年の付き合いだよ。こっちも苦手意識あるからあんまり人の事言えないけどさ。
たまに「それいる」と「それいらない」しか言わない。
ありがとうございますとかさ! 今回は結構ですとかさ! もう大人なんだから、少し距離があるならそれくらいさ。無し、こいつは無い。多分、寝ている。
ソースはチョーさんが前に「アイツ健康優良児だから、夜は十一時に寝て朝九時に起きるぞ」って、そもそも小説の題材にするなら、こんにちはくらい言えよ。
ピノだ。でもアイツ知っているかな。鳴らした。メッセだけ送るか。ボロボロにされている可能性は無いだろう。人には弱いが酒には強い男なのだ。すぐ鳴った。
「悪いけど、大まかにしか知らない。実家にでも放り込んだらいいと思うよ。もう動いた方がいいかも」
「なんでだ?」
「捨てたところを見られたくないだろ。ワーリオの実家、鮮魚店なんだ」
黒門大黒鮮魚店という店らしい。
「タクシーに乗るのは現実的ではない。堺筋は」
「分かっている。北行きだ」
「変に遠回りされるより歩いた方がいい。そのあとネカフェに行ってから帰るのが多分早い」
「妙に饒舌だな」
「今日はここのウヰスキー全部飲んでやるって決めてんだ。ん、マスターが何か言いたいらしい」
「お願いします。もうこれ以上は、なんでもしますから」
「悪いけど、頑張ってくれ」
「というわけだ。明るくなるのは意外に早い、早く運ばないとまた警察に行くはめになる。なんだよ、もっとあるだろ」
不穏なワードが聞こえたが、とりあえず僕はライブハウスに戻ることにした。ミナミロックは僕たちが根城にしているライブハウスだ。
この辺りはライブハウスが密集していて、色々な表現者がたくさんの想いを伝えている。
その生々しくて鋭い音楽、歓声や興奮が伝わる。
これだからバンドを辞めることが出来ない。
予想通り、打ち上げからはぐれたメンバーが酒を飲み、たばこをふかしていた。
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