第10話 ベースマンはなぜかモテる
ここでいやいや俺には女の子をどうする趣味は無くてと言い訳をしても、疑いは晴れない。
そうだ。ここでワーリオと俺は付き合っている。
ダメだ。それではあかりちゃんをどうにかしようとしている以上に話がややこしい。まかり間違えてここに二次会終わりの仲間が通りがかると、幼女誘拐と同性愛を含んだロリホモという不名誉なあだ名がつきかねない。
ジャニケンは大歓迎するだろうが、ジャニケンの男になりたくないし、そもそも男なのか女なのかもよく分からない。
「まぁまぁ、お兄ちゃんたち、ここで話すも何ですからすぐそこに警察署あるんで」
知っている。ライブハウスの正面にあるから歩いて数十秒で行ける。行きたくないよ。イベント終わりで汗をかいているし、きっと明日も入ることの出来る時間は厳しいだろう。
「あんたら何やっとるんけ?」
え、ここでヤンキーかよ。もうこっちは警察でお世話になる心づもりは出来ているんだよ。ジャニケンがきっと上手くやってくれるよ。
あとで、幼女誘拐犯っていじられるかな、ワーリオ潰しているしな。めんどいけど、仕方ない。判断ミスだ。でも逃げられるよりマシだった。あの男なら姪をほっておいて、女子高校生の方へ行きかねない。
ワーリオは子どもみたいな人、私がいないと何も出来ないんだから仕方ないわ。と、思わせるのが得意な男なのだ。
浮気がバレてもめたことがあってから、ワーリオは「味変」と言い訳をし、これまたえらいことになったこともあった。
女たちの前で性的接触があれば浮気、ただのイチャイチャならセーフという説得をし、他の女の前では「高級ホテルでパスタを食べただけ」と言い訳をする。女が賢いのはもめると出禁になるからライブハウスで表立ってもめない。
ワーリオはアホなのでXをよく使って、居場所を簡単にポストする。
さて、明日以降また警察のお世話になるかもしれない。どうせなら捕まってしまえ。ワーリオは女遊びの中でもメンヘラの扱いがとても上手い。
「うちの娘に何しとんねん」
警察官が新キャラを囲んだ。応援を呼んでいる。
「あ、そこまで」
ジャニケンだ。ホッとした。
「何だ。君、は」
身長百九十センチ大男が現れたら、誰でもたじろぐ。
「私たちはその女の子の保護者です」
ジャニケンが発した言葉に思わず泥酔しているワーリオに警察官の目がいった。そうかその視点は合っている。
「うちや、うち」
「その身分証を」
「出すから、あんたらうちの娘を連れて行かんで」
サイレントが聞こえ始めた。早いな、さすがだ。それにしても女性の言い方もややこしくさせている。
「お兄さん、とりあえずパトカー乗る?」
「僕ちんは上になってくれる方がいいぽよ」
「うん、分かった。乗ろか」
ワーリオは半強制的にパトカーに詰め込まれた。気の毒に、誰かの教育のお陰でワーリオは閉所で薄暗いところで嘔吐させるようにされている。重ねてお気の毒に。
「とにかくここでは何なんで警察署で」
取り調べ室に初めて入ったが、この部屋が外から見えると思っていなかった。えぇと腰に手を当てて入って来た年配の警察官が向かいに座った。
「悪いな、お兄ちゃん。少年課しか空いてのうて、それで免許証ありがとう。お母さんがな、冷静やないねん。あのでかい人が」
特徴は声が低めの女性と思われるかもしれないが、他はほぼ男だ。
「あれは男です」
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