第21話 2人の姫
【夜 二人の姫】
「大丈夫、、、ですか?」
レティシアがそっと部屋へと入ると、エル様の横でリーン様がそっと手を握っておられた。
「ええ。眠っているだけみたい。結構傷も深かったけど、竜の力で回復も早いから」
そう言いながらも、リーン様の顔色が悪い事に気が付いてしまう。
「お代わりします。リーン様も、休まれてください」
エル様をベッドに横にしてから、リーン様はずっとエル様の傍から離れていない。
「大丈夫よ。竜だもの。体力には自信はあるわ」
私の言葉も拒否されて、エル様の手をずっと握っておられる。
リーン様と、エル様の中に入れるとは思っていない。
けど、このままでは、二人とも。
「休まれてください。お願いします」
びっくりした顔をして、私を見るリーン様。
少し強く言い過ぎたかしら。
「ごめんなさいね。レティシア。これは、私のわがままだから」
リーン様は、薄く微笑んで。
また、エル様の手を握りながらその顔を眺めるのだった。
【エル】
「エル様っ!」
僕が目を開けると、心配そうな4つの目が見えた。
「リーン、レティシア、、、」
「良かったぁ」
リーンが、涙目になっている。
「二人とも、ありがとう」
痛てて。体が痛くて起きれないと思っていると、レティシアがそっと体を支えてくれる。
「無茶はしないでよ?ね、エル」
リーンが、また幼児化している。
そんなリーンをそっと撫でていると、体を支えているレティシアがそっと体を寄せて来る。
「レティシアも。ごめん。心配かけたね」
「本当です。心臓が止まりそうでした。心配させた罰として、今晩は一緒に寝ていただきます」
本気で心配しているのか、引きずり込むつもりなのか。
手、手が怪しい場所に行ってるからっ!
「起きたか?」
そんな状況の中。
扉を開けて入って来たのは、校長だったが。
「んー。少し、後に来る事にしよう」
そのまま、空けた扉を閉めようとする。
「いや、待って、待ってくださいっ!校長っ!」
思わず現状から逃げたくて。
校長を必死に引き留めるのだった。
「そうか、、魔族、、、、」
ひとしきり説明を聞いた後。
校長はうなりながら考え込む。
「とりあえず、見回りの強化と、逃げた魔族の捜索は行うように進言する」
そっと、二人を見ると。
「君たち3人には、改めて感謝の意を伝えたい。魔族となれば、この学校が。いや、この都市が吹き飛んでもおかしくなかった。それを食い止めてくれたのだ。何度礼を言っても足りないくらいだ。さて、私はこれくらいで出て行く事としよう。二人との時間を邪魔したようで、すまなかったな」
しかし、魔族か、、、
ぶつぶつと言いながら、校長は部屋から出て行く。
助かったのは、僕なんだけど。
「エル様。エル様の身体は変化しています。私ではどう変化しているのかは分からないのですが、、、」
レティシアが、困った顔になっていた。
「どう、どう変わったのか、分からないのですかっ?」
「変わったのは、自分でも分かっているんだ。えと、、、その、、ね。神竜剣が使えなくなってるから」
僕の一言で、二人が止まる。
え?
何かまずい事を言った?
「エル様。今後、外に出るのは禁止にします」
「もしくは、私たちのどちらかと一緒に歩いてもらいます」
リーンと、レティシアの目が座っている。
「えと、、それは、どうかと思うけど、、」
「ダメです。神竜剣が使えない状態で、また魔族と出会ったら、エル様はどうなりますかっ!せめて私か、レティシアと一緒にいてください!」
「肉壁くらいにはなってみせますから」
二人の決意が、というか、目が怖い。
うんと言わないと、絶対に離してくれなさそうな雰囲気に。
僕は二人のどちらかと常に一緒にいる事を了承したのだった。
「これは、どうですか?」
「エル様、お代わりはいりますか?」
学食で、二人がかいがいしく世話をしてくれる。
美人の二人がべったりなのは仕方ないとして。
学食の中でのヘイトが、溜まりすぎている気もする。
「また、あいつか、、、」
「金姫と、銀姫を、、、、」
「これみよがしに見せつけてくれる、、、」
そんな言葉がちらほら聞こえて来る。
結構、、恨まれてる?
僕、刺されたりしない?
「そういえばっ!」
レティシアが、笑顔で目の前に顔を出す。
「エル様の身体の事を調べる事ができる人が見つかったかもしれません!」
「え、本当?レティシア?」
「はい!リーン様。私の知り合いなのですが、学術技研の首領で、私の師匠でもある人です。魔木と、神木を調べている代わり者の方なのですが、、」
へぇ。その学術は、100年前に失われたはずなんだけど、、、
え?なんでそんな事を知っているんだ?僕は?
「魔族の研究もされてまして。その方なら、分かるかも知れません!」
「なら、明日にでも、会いに行きましょう!」
二人で、硬く手を握り合っている。
なんか、僕、置いて行かれてる気がするんだけど、、、
ついでに、二人が手を取り合って喜んでいる様子を見て、一部の女子生徒が、黄色い声を上げている事には、気が付かないふりをするべきなんだろうと。
意味の無い事を考えて、一旦現実から逃げる僕だった。
超勇者になってやると意気込んでいたのに、「枝召喚」ってなんですか!?そもそも、「枝(えだ)術!?」って盆栽でもしろって事ですか?!聖女様からも無視されて、最底辺突破ですか?!最強外れスキルの最強勇者。 こげら @korea
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