第47話 おみやげのマイバッグを仕入れる
「ところで、ここのマイバッグのおみやげを所望されているんですけど、ひとりいくつまで買えます?」
マスターに購入制限を聞く。特に転売ヤーと疑われたわけではないけど、このような無双出来るような神器にはおひとりさま一点限りとかの購入制限とか、所持の許可やら面倒くさいものと言うのが付いてると言うのがバローにとっての常識だった。しかし、ここでの常識は違った。
「いや、別に何も制限はないけど、そもそも、今、新デザインに入れ替える予定だったから古いのの在庫切らしてて、新しいのもまだ入荷してないんだ。」
前回のアップデートで、ニューモデルのハードウェアが必要になったので古い方は叩き売ったらしい。
「じゃあ、私が入荷してきたファーム更新失敗したバッグを修理してもらえばいいじゃないの?」
カスミがバッグを突き出してきた。ブタ箱に入れられていたとき取り返してきたと言って何故か2つになってたうちのひとつだ。まさか今まで持ってきていたとは。
「それ、返してこいよ。どっからパクったんだよ?」
元の持ち主のもとに返してやれと言うと、自信満々の顔をしてカスミが言う。
「これははじめから私のバッグよ。遺失物保管所にあったから返してもらってきただけよ。」
知ってるぞこの顔。瓶ビールを発泡酒のピッチャーとすり替えたとき見つかった相手を威圧した時の顔だ。
「いうてもひとつか……。それに、その話だとそのバッグはカスミのだろう。いまは神官さんに頼まれた譲渡前提のバッグが複数必要なんだ。」
「バッグの中にバッグが入ってるよ。」
カスミはバッグの中から次々にバッグを取り出して、テーブルと空いてる椅子には20個のバッグが並べられた。いずれもアップデートに失敗してオシャカになってるので、取り出したバッグからさらにバッグが出てくるマトリューシカというわけではない。
「あと、バローが返り討ちにした賊からの収奪品もあるんじゃないの。」
そうだった。オレがパーティー追放になったのはメンバーがマジックバッグを入手して用済みになったのがきっかけだ。メンバー装備にマジックバッグがあったはずだが、アップデートされたとき、奴らのバッグはダンマリだった。
リリースノートの更新履歴では、この自動アップデートが付いたのはレベル2リビジョン34ビルド56からだった筈だ。ということは、奴らはそれ以前のバージョンか、はたまた吹かしているかのどちらかだ。
「いや、拾得物として預けてある。あと2カ月奴らがそこにあることに気が付かなければオレのものになるが、運び屋の仕事の後受け取ってるんじゃないかな?」
「そっか。」
残念そうにカスミがぼやく。いや、仮にあったとしても多分ハードウェアが古くて最新ファームが載らないタイプか、はたまたここのマジックバッグじゃないから修理は出来ない。
そんなことより盗品を堂々と修理して転売する方向で話が進んでる方にツッコミ入れたくなるが、じっと我慢しながら並木さんに切り出す。
「ファーム更新に失敗して、使えなくなったバッグなんですけど、交換用の石って持ってますか?」
「用意してすぐに交換できるようにしてたのに誰も来なかったんだよ。キミが第一号だ。」
石を交換して20個の壊れたバッグが蘇える。たったひとつの部品が壊れる、いや部品自体は壊れてなくて、中に書かれたプログラムが本体と不整合してるというだけで全体が機能しなくなる設計ってのもどうなんだろう。
三人は息を吐くように次々と手際よく石を替えてバッグを再始動して渡してくれる。
起動されたバッグにはまだものが入っていることがわかるが、やはりバッグが仕舞われているバッグがいくつかあって、また取り出したら今度は40個の壊れたバッグが出てきた。流石に並木さんもその場で出せる分が無いらしく、焼き損じた石を焼きなおす方法を教えてくれる。そのためにはライターと携帯電話が要るとのことだが、携帯電話は電話回線生きてなくてもいいとのことで、古いガラクタやると言われて画面が割れてるのと簡易型のROMライターを貰った。
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