第7話~夜の痴態~

「よし、この辺りでいい」

「は、はい」


 アンジェの肩に乗っていた魔王蝸牛は、そう言うと地面に降りた。


「もっと足を広げるんだ」

「あの、は、恥ずかしいんですけど」


 魔王は、アンジェの真下に行くと、その足に張り付いた。見上げると、アンジェの茂みと秘部が見えた。


「小さくなるのも、悪いことばかりじゃないな」

「えっ?」


 思わず出た本音を聞かれてしまい、魔王は切れぎみに答えた。


「な、何でもない! いいから、じっとしていろ」

「は、はい!」


 アンジェは言われた通り、目をぎゅっと閉じた。魔王蝸牛は粘液をアンジェの肌に塗りつけながら、ゆっくりと根源たる魔力の源へと足を進めていった。ヌルヌルした感触が、少しずつ自分の敏感な部分へと近づいてくる。これから何をされるのか、アンジェは何となく感づいていた。それに対する期待感からか、アンジェの秘部から一筋の液が太腿を垂れる。魔王蝸牛はそれを舐めた。それだけで、魔力が補充されるのがわかった。


「どうした、何を期待している?」


 わざと意地悪く、魔王はアンジェに語りかけた。


「あ、あぁ、早く、早くしてください。私、どうにかなっちゃいそうです」

「そうしたいが、何せ蝸牛なのでな」


 魔王蝸牛が脚の付け根まで上がる。アンジェは待ちきれなくなって、自ら左手の指で秘部を広げ、その肉芽を剝きだしていた。


「ここ、ここです。早く、ここに来て」


 魔王蝸牛はその手を素通りすると、遠回りして、アンジェの尻を這う。


「だ、だめ、焦らさないで!」


 性欲と高まりと共に、アンジェの胎内の魔力は凝縮され、純度が増していく。そろそろ頃合いとみた魔王は、アンジェの肉芽にその身を這わした。


「あっ、あぁぁ!」


 ぬるっとして冷たい、人ではない粘膜の感触。それが自ら剥きだした快楽の芽に触れると、アンジェは嬌声を抑えきれなかった。


「いいぃ! すごく、いい」

「行くぞ! 《振動(バイブレーション)》」


 魔王蝸牛は、魔法を自らの身体にかけると、前後に動く。振動は快感となり、アンジェの身体を貫く。


「あぁぁああ! ダメ、も、もう。立ってられない!」

「あまり大きな声を出すと、下の者に見つかるぞ」

「そんな事、言われても」


 アンジェが下を見るのとほぼ同時に、かすかな声に気づいた村人の一人が高台を見上げた。アンジェは一瞬、目が合ったと感じた。


「いやぁぁ! み、見ないでぇ! あ、やだ、あぁあ! いっちゃう!」


 激しい羞恥心と同時に、アンジェの腰がガクガクと震えて絶頂に達し、その場に崩れ落ちた。アンジェの魔力が絶頂と共に昇華され、放出される。魔王はその一部を吸収した。


「よっし! これだけの魔力があれば!」


 魔王蝸牛の身体が光る。先ほど目途をつけていた生き物に意識を飛ばすと、禁呪の《魂の転生(リインカネーション)》を用いて魂を転生させた。


 腰から崩れ落ちたアンジェは、快楽の余韻に浸っていた。カリアとの交わりでは味わえなかった絶頂感に満足はしていたが、未だ満たされていない気持ちもあった。アンジェの願いは、バレンシア神の像が持っているような太くて逞しいモノで、身体の中を満たされたままイキたいのだ。

 呼吸が落ち着いてくると、アンジェは神の使いである蝸牛の姿を探した。


「あれ、どこに行ったのかな」


 捲っていた法衣を元に戻しながら立ち上がろうとすると、お尻に何か違和感を感じた。


「えっ、もしかして……」


 アンジェが手で取ってみると、それは潰れた蝸牛の殻だった。倒れた時に、お尻で下敷きにしてしまったのだ。


「やだ、私、とんでもないことを!」


 アンジェは慌てて《回復(ヒール)》の魔法を唱えようとしたが、体内で魔力を上手く練ることができなかった。


「ど、どうして」

「しばらくは無理だ。お前の力は我に捧げられたのだ」

「あぁっ、生きていたんですね」

「お前の力で、新たな器を手に入れることができた」


 アンジェの前には、一匹のトカゲが赤い舌をチロチロと出していた。


 村を見下ろす高台で、魔王が復活の第一歩を歩み始めたとも知らず、村人達の宴は終わり時を迎えていた。


「どうした? 見張り台なんか見上げて」


 宴の炎から離れて見張り台のある高台を見上げていた村人に、仲間が近いて言った。


「いや、さっき上に誰かいたような」

「何言ってんだ? もう見張りなんて必要ないんだぜ。誰がいるっていうんだよ」

「そう、だよな。はは、飲み過ぎたかな」

「来いよ、朝まで飲むぞー!」


 言えなかったが、彼は確かに見た。下半身を露出した女を。見間違いでなければ、あれは村はずれの教会に赴任してきたメリダ法国のシスターアンジェだった。


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