爺さんの遺産を継いだら土蔵の中にあった扉から異世界行けちゃった

桜蘭

1章 解ける呪いと始まりの出逢い

1話 彼と私の出逢い 

私が彼と出会った最初の出来事は……しつこいナンパを受けてる時に追い払って貰えた事だった。


「………大丈夫?怪我は無い?」

「は、はい!ありがとうございます。」

「無事ならそれで良いよ。それじゃ……」

「あ、あのっ!何かお礼を!」

「……俺に関わっても良い事無いから。さよなら。」

「せめて、おなま……え……」


私の言葉には振り返らずに歩き去ってしまったのを追い掛ける事も出来ずに見送って終わってしまった。

二度目の出会いは前回から一週間後でした。


「ん〜っ!んっ!んーっ!」


学校帰り、友人と別れ一人になるのを狙っていたんでしょう。

私の前にワゴン車が止まるのと同時に中から数人の人が現れ私の身体を拘束、車に連れ込もうとして来ました。

でも、私は連れ拐われる事は無く……


「なっ?!……がっ!ごっ?!」


一人目のフルフェイスの男は死角から現れた男に横腹は蹴られ勢いのまま車にヘルメットごとぶつかった。

現れた男はそのまま跳ね返ってきた男のヘルメットを掴み反動を利用して車に叩き付け意識を飛ばして制圧。

呆気に取られていたもう一人の男の股間を蹴り上げた後、同じ様にヘルメットを掴み叩き付けた。

その後、車の中に待機していた男が出て来ようとしたけど、何時の間にか運転席に回っていた彼は開いた扉を蹴りつけ外に出ようとしていた男の身体ごと扉と挟み、怯んだ所を扉を開け一度蹴り上げヘルメットごと後頭部を叩き付けた後に腕を取り背中から背負投げコンクリートに叩き付けた。

その時、バキリ!と言うかゴキリ!と言うか、バキャ!と言うか骨が折れる音が聞こえた気がした。


その後、私に使おうとしていたのか車の中にあったガムテープを持ち出し誘拐犯達の身体をぐるぐる巻きにした後直ぐに立ち去ろうとしたのを私は引き留めた。


「あの!待って下さい!」


振り向いた彼は私の顔を見て驚いた顔を一瞬だけ浮かべ直ぐに以前と同じ無表情に戻ったのを見て言葉を詰まらせた。


「少しは危機感を持った方が良いと思う。おそらくだけど、良い所のお嬢様なんですよね?それにとても綺麗で可愛いのだからを理解して行動しないと駄目だと思うよ。それじゃ……」


誰かが通報してくれたのか遠くから警察のサイレンの音が聞こえてくるのを尻目に、私は彼に言われた言葉を反芻したのと同時に理解して顔が赤くなるのを自覚して引き留める事が出来なかった。


そして……三度目。

何気無く公園を散歩父の用意した護衛は離れて居るをしていたらベンチに彼が居た。

私は直ぐに駆け寄り二度も助けて戴いたお礼をし渋る彼から何とか名前だけは聞き出す事が出来ました。


「もう会う事は無いと思います。忘れて下さい、それに俺に関わると傷付き怖い思いをするだけですし俺自身も……」


そう言って全てを諦めた目、絶望した目をしたまま背を向けて離れて行く彼を……篠崎しのざき悠馬ゆうまさんを見送りました。


だから私は、家の力を篠宮しのみやの力を使った。

普段であればこんな失礼な事はしない。

でも……あの目がどうしても気になったのだ。

私と同い年位だと思われるのに、全てを諦め、絶望した目。

何もかもがどうでも良いと言う雰囲気。

そして……気のせいかも知れないけれど諦めと絶望の中に寂しさ、悲しさ……そして……「助けて……」と救いを求めるかの様な光。

だから、私は……………


「彼の事は分かりましたか?爺や。」


お祖父様よりも前、何代にも渡って篠宮家に仕えてくれて支えてくれて居る爺や。

私にとってももう一人のお祖父様の様な存在に調査結果を尋ねた。


「分かりはしましたが……これは……」


爺やが躊躇う時は良い結果では無い時。

だから自然と私の背筋は伸び顔が強張る。


「正直に申しますと、何故こうなるのだ?と一切理解が出来ない……と言うのが私の答えです。はっきりと言いますとお嬢様には見せたくありません。」

「良いわ。見せてください。彼のあの目の理由を少しでも知れるのなら……私が彼に恩返しを出来るのなら、私は知りたい。必要なら篠宮の力を使う事も躊躇いません。」

「…………分かりました。お嬢様の判断を尊重します。そして必要ならば旦那様の説得も致します。」

「ありがとう……爺や。」


調査書を読み進めていく。

その内容が信じられずに爺やを思わず見た……でも爺やの真顔の頷きだけで、その全てが真実だと分かった。


「こんな……こんな馬鹿な事……」


自然と私の目からは涙が零れ落ちる。


「こんなの酷すぎます。どうしたらこんな……こんな!!」

「お嬢様……私も読んだ時は目を疑いました。実際に確認も致しました。ですが、全てが真実だったのです。この事を知りどうなさいますか?」

「私は……私は、彼を……悠馬さんを助けたい。悠馬さんの側に居たい。」

「そうおっしゃると思いました。なので提案がございます。」

「提案?爺やは何を考えているの?」

「簡単な事です。悠馬殿を学園に招待し入学させるのです。先ずはここから、悠馬殿に閉ざされた進路を篠宮でご用意するのです。」

「確かにそれなら……理事長のお父様にお話します!今直ぐに!」

「お待ち下さい。もう一つ御座います。」

「もう一つ?」

「はい。それは…………」


確かにコレは必要な事ですね、これまでのツケを払って貰い悠馬さんが安心して過ごせる様にしないと行けませんね。

そして……願わくば、悠馬さんと……

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