第6話 つい、カチンと。

 介護施設を利用している方は、いろんな病気を抱えている。

 認知症もその一つ。


 そして困ったことに、他人の部屋を覗く徘徊プラス物をポケットに入れてしまうタイプの源治さんは、他の利用者さんからめちゃくちゃ嫌われている。


 特に、女性陣からの評判が悪い……


 廊下で千代さんとすれ違ったとき、強い口調でこう言われた。

「なんで、源治さんをここに置いておくの? 物は盗るし、あちこち歩くし、みんな迷惑してるんだよ」


 この施設から追い出してくれと言わんばかりの千代さんの言葉に、ついカチンとした私は「じゃ、源治さんはどこに行けばいいんですか? 家に居られないからここにいるんですよ。ここに居られなくなったら、どこに行けばいいんですか?」

と言い返してしまった。


 いつも強気な千代さん。でも、意地悪な人じゃない。少し考えてから

「私もいろんな施設に行った。あぁいう人も確かにいたなぁ」

と呟く。


 『嫌いな人は、どこかへ行ってほしい』その気持ちはわかる。けれど「この人には、何を言ってもしょうがないか」と諦めて接するということも必要。それを周りの人たちが理解してくれたらいいなぁと思う。


 


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