第376話 出張という名の帰省
「はい、ヴァンピエールです」
「もしもし、あ、ニコラシカ御婆様? 正宗ですお久しぶりです」
二泊三日の出張命令書を総監に提出した後、ロリ爺様に電話をかけると、執事さんではなく、ニコラシカ御婆様が出てくれた。
「あら! 正宗ちゃん。久しぶりね。元気かしら?」
「はい、元気です。御婆様もお変わりありませんか?」
しばらく世間話をしてから、マティーニ爺様につないでもらう。
「おう、正宗。元気か。やっと軍人やめて領主継ぐ気になったか?」
相変わらずの爺様節だ。
「まだ領主になるには経験値が足りませんよ。それに、経営手腕はおじい様にはまだまだ及びません」
「ワハハ、ぬかせ、この!……で、どうした?」
俺は爺様に要件を伝える。
「そうか、わかった。待っているぞ」
「はい。よろしくお願いします」
電話を切ると、室員たちの視線を感じる。
「……室長、マジで大公殿下の孫なんすね……」
アルフォンス少尉がボソッとつぶやくと、全員がうんうんと頷いている。
「お前らに嘘ついてどうするんだ? ……つーか、俺の爺様そんなに偉いのか?」
あのロリ爺様がここまで知名度が高いとは全く想像がつかない。
「昔ルシファー国王陛下が魔界を開いたときの最大の出資者ですよ」
「邪神との戦いで、単騎で邪神の一個師団に
「テクタイト鉱床にアダマンタイトが含まれているのを発見した最初の方だったとか」
へ? それって盛りすぎじゃね?
「自分の歳を省みずに、犯罪すれすれの年齢の女性いや女の子を口説いて結婚したとか」
あ! それ大当たり。ヴァンパイアじゃなくてロリパイヤと言われていたし、婆様に惚れた理由も俺に話してくれたはいいが、小さな胸に惚れたって口滑らせて、大魔神の表情になった婆様にバチ回されていたからな。
なんか、偉いのかそれともエライことなのかよく判らん。
噂半分に聞いておこう。多分半分いやそれ以上に盛りまくっているだろうから
さて、仕事に戻るか。
と思いきや
「キーンコーンカーンコーン」
鐘が鳴りますキンコンカン!ときたもんだ!
いつものパターンで定時です。本日の業務終了! はあ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「明日からヴァレンシュタッフェル領へ出張だよ。マティーニ爺ちゃんに会いに行くんだ」
次元断荘の部屋から邸宅に戻りフラン達に報告する。
「どうしたのじゃ?」
フランやアスタが不思議そうな顔をしている。
そりゃそうだ。俺の仕事とリンクしないからな。
「いや、実はさ……」
俺は今回の出張の経緯を話す。
「成程のぉ。そういうことじゃったのか。まああの領地は鉱物資源が豊富じゃからの。無理もないの」
経緯を聞いてフランは頷く。
「ねえ、お兄様。私久しぶりにおじい様にお会いしたいですわ」
アスタがおねだりしてくる。
ロリ爺様のところへ行くのは、ハネムーンのやり直しの時以来だ。
アスタも会いたいのだろうなぁ。
「私もお爺様とお婆様に会いに行きたいわ」
幸代はお婆様が優しくしてくれたのがとても心に残っているらしい。
両親のいない彼女にとっては、マティーニ爺さんの所が実家みたいなものだからな。
「わかった。だけど今回は俺の出張で二泊三日しかないから、それ以上お泊りするんだったら、悪いけど俺一人でこっちへ戻るけどいいかな?」
この前みたいに休暇だったらいいんだけど、実家に出張って公私混同になりそうだわ。
何せ、今回の出張、宿泊先が実家ということで、宿代が認められなかったからなぁ。
「その時は妾とアスタで面倒を見ておくのじゃ。気にせずとも良いのじゃ」
……ああ、内助の功。有難や有難やフラン様。
◇◇◇◇◇◇◇◇
そして翌朝
……なぜかお袋が竜車へ乗ってきた。
「ちょっと私も帰るわよ」
(……これ、出張じゃなくて家族の帰省だろうよ)
「お袋、親父の飯どうするんだよ?」
「心配しないでいいわよ」
台所では、親父が「カレー三日分!」と書かれた鍋の前で呆然と立ち尽くしていた。
姉貴は毎日王立中央大学の治癒学部の授業で忙しく、親父の面倒まで見れないらしい。
(……親父、生き残ってくれよ)
「行ってらっしゃいませ」
竜車のドアを開けてくれたアザゼルさんたちの見送りを受け、護衛の瞳さんと彩さんの御者で嫁全員とお袋を乗せて出発する。
嫁やお袋は久しぶりの帰省でルンルン気分だが、俺はロリ爺様に見せる資料に目を通し、打ち合わせの内容を確認する。
そして20分後
「うえ……気分悪い……」
竜車の中で文字を読んでいた俺は、見事に乗り物酔いをしたのだった。
俺は本当に悪魔とヴァンパイアの眷属なのだろうか?
乗り物酔いで死にかけるとか、ただの人間じゃねえか。いや元人間なんだけどさ。
「正宗や、着いたのじゃ」
乗り物酔いをした俺は、ガールズトークを子守歌にして竜車の中で爆睡していたようで、フランに揺り起こされる。
「お帰りなさい」
ニコラシカお婆様(とはいっても、ぱっと見四十歳ぐらいにしか見えない)が玄関の車寄せで出迎えてくれた。
〜〜〜あとがき〜〜〜
この度は沢山の作品の中から拙作をお読み下さりありがとうございました。
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