第10話 メイド服な隊員、接客する(?) 2
「でも、祭りの間は、この手合いはいなくならないかもね」
足元に転がる男を見下ろし、レオナは苦笑い。
それを聞いて、カーラがうげぇっと顔をしかめる。
「かんべんしてくれ。なんでこんなのが寄って来るんだよ」
「まー、子連れで食事できる店なんてものがあるなんて、街の外の人は思いもしないだろうし」
この街の外から来た人間にとって、ここは『酒場』だ。
だから、そっちを期待して入ってくるのも、まあ無理はない。
「それに、店員が店員だからねー」
レオナは店内を見回した。
満席となっている客席を、レオナと同じ
レオナから見て「そりゃあ男たちの視線が止まるのも当然だよね」って顔ぶれだった。
美少女から美女へと絶賛移行中な金髪女性など、まだマシな方。
他には――
頭の上で耳がピコピコ動く、背の高い
鋭い目つきで子どもを泣かせ、しょんぼりしている
――そんな目を引く若い
「やれやれ。祭りが終わって、外からの客が引き上げるまでの辛抱か……」
「まーまー。そうボヤかない」
ポリポリと後頭部をかくカーラに、レオナは苦笑を向ける。
そこへ。
「祭りが終わる前に、ひと騒動ありそうですよ、隊長」
レオナの耳元に息がかかる距離から、声。
「わあっ!!」
驚いたレオナは跳ねるように飛び上がり、反射的に前にいたカーラにしがみついた。
しかしすぐに声の主に気づき、ほっと息をつく。
「って、サイカ。ビックリさせないでよ」
彼女も、今日は店員としてメイド服姿だ。
だが、サイカのような
「隊長? 抱きつくなら、副官の
サイカは、カーラに抱きついているレオナを見て、わずかに頬を膨らませた。
それを鼻で笑うカーラ。
「はっ。オレの尻ぐらいクッションがねーと、隊長がケガすんだろ? てめーの薄い胸に飛び込んだら、肋骨が刺さっちまうってーの」
「カーラ、貴様今なんて言った? 薄い……なンダっテ?」
サイカの目が細まり、空気が一変する。
空気がピリつき、店内の客が静まり返った。
(わーっ、まずいー!)
サイカの黒髪が、風もないのにぶわりと逆立っているのは、レオナの幻視なのだろうか――。
帯剣していれば、今ごろ店内は血の雨だったかもしれない。
レオナの行動は、素早かった。
「サ、サイカ! 落ち着いて落ち着いてっ」
慌ててサイカの腰に抱きつき、頬をぴったり押しつけてなだめる。
「はい、隊長♡」
その瞬間、空気に張り詰めていた瘴気が霧散した。
(……最近、サイカの扱い方がわかってきた気がする)
レオナは苦笑しつつ、サイカの腕の中でやれやれと息をつく。
そんな二人を呆れ顔で見ていたカーラが、問いかけた。
「で、ひと騒動ってなんだよ」
「ああ、そうでした。さきほど、シェラの――……あ、ちょうど来ましたね」
サイカの目線を追って、レオナも視線を向ける。
通りの向こう――日がわずかに傾き始めた空に、黒い影。
鳥――いや、シェラの使い魔だ。
羽音を響かせながら、一直線にこちらへ飛んでくる。
そして、バサバサッと羽ばたく音とともに減速すると、レオナの頭の上にスタッと着地。
「……おまえ、それ絶対わざとだよね?」
差し出していた腕をあっさりスルーされ、レオナは頬をぷくっと膨らませた。
上目遣いで鳥をにらむ。
その頭の上で、使い魔は「ふわぁ〜」と大
(鳥がアクビすんな!)
そう言いたくなるが。
じつは、見た目は鳥でも、この世界のどの種にも該当しない。
憑依している使い魔自体は、じつは鳥ではないのだ。
(だからアクビするのもしょーがな――いや、やっぱり変だって!)
「サイカ、シェラはなんて?」
使い魔の足につけられた獣皮紙を外し、目を通しているサイカに、レオナは問いかける。
こんな目立つものを街中に飛ばしてきたということは、ただ事ではない。
「どうやら――」
サイカは小さな紙片に目を通し終えると、淡々と告げた。
「闘技場の地下で、
第一章 完
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【作者ごあいさつ】
次話から第二章『メイドな隊長、出撃!』が始まります。
ここからまた、敵味方に登場人物が増えていきます。(第三章ほどではありませんが)
みなさんに気に入っていただけるキャラクターが、一人でも現れると嬉しいのですが。
なお舞台は、日常から戦いへと、少しずつ移っていきます。
レオナは、いったい何と戦うのか?
レオナは、どのように戦うのか?
せっかくなので、色々予想していただければ幸いです。
ちなみに、「
それどころか、そもそも簡単に戦闘を始めてくれませんでした。
前世のある転生者は、これだから……。
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