流行りの要素×他にはないSMを絡めたストーリー。詩的で美しく読みやすい文章。この作品でしか味わえない耽美な魅力に没頭してみませんか?
第一に、メイン三人が『タイプは違えど皆強く美しい女性!』なので、カッコイイ女性キャラと出会いたい方へ真っ先にオススメしたい作品です。
とはいえ男性キャラクターも『包容力があってカッコイイ』『ミステリアスで妖艶』『犬系で可愛い』と思わされる方々が揃っているのでそちらもオススメしたい…。
悪役令嬢モノ、というと『婚約破棄されたヒロインが高貴な男性に見初められて幸せにしてもらう』という逆転勝ちなストーリーを思い浮かべてしまいますよね。
その先入観により、この作品を読み始めた時の私も「婚約破棄されたヴィヴィアさんの危機的状況で、真のヒーローが助けに来るのだろう」と思っていました。
しかし彼女の師であるトワ先生(女性)が格好よく助けてくれて舞い上がりました。
こういう場では男性キャラクターが助けに来そうなものなので意表を突かれ、イケメンお姉さんヒーローだ!カッコイイ!嬉しい!と大喜びしたものです。
本作品の主人公は三人いるのですが、このトワ先生もその一人。真っ先に惚れたのは彼女でした。中性的な口調や容姿、ヴィヴィアさんを支えてくれる頼れる大人な雰囲気が、読み進めるたび伝わってきてとても好きでした。
そんなトワさんに導かれ、ヴィヴィアさんは令嬢から一転、『月華園』というSМショーパブの一員となります。
そのショーのシーンが文体も相まって本当に美しい……いやらしさのない上品な妖艶さが満ちており、静謐な艶のある、大人な雰囲気に呑まれました。
この作品の魅力の一つは、美しい文章だと思います。この文体をもっと味わいたい、もっと読み進めたい、と強く思いながら夢中になりました。言葉選び、比喩表現が本当に美しい。
文学的でありながら詩的、童話のような甘い読みやすさと、絵画のように精緻な耽美が合わさっているようでした。
また、この作品でのSMが暴力的なものではなく『SとMの信頼関係で成り立っている』『主導権を握っているのはMの方』というのも、安心して読むことの出来る要素であり、ショーとしての美しさを揺るがすことのない土台にもなっていたと思います。
ヴィヴィアさんが月華園で出会う方々も魅力的なので触れさせてください!
まずは蜘蛛蘭さん!歌やポールダンスまで巧みにこなす、蜘蛛の刺青が特徴的な美青年…口調は穏やかでミステリアスな雰囲気にドキドキしたものです…そしてなにより、この蜘蛛蘭さんとヴィヴィアさんの距離が少しずつ近付いて行ったり、二人共恋愛に不慣れなような雰囲気が微笑ましくももどかしく、二人の関係性がどうなっていくのか、とても楽しみに読み進めていました…!勿論この二人も、よくある恋愛小説のようにはならず。
S嬢らしく凛と成長していくヴィヴィアさんと、彼女の手を取る蜘蛛蘭さんとの関係性を、ぜひ見届けて欲しいです…。
そしてなんと言っても、ヴィヴィアさんやトワさんと同じく"カッコイイ女性"…三人目の主人公、リヴィアンさん!童顔でグラマラスな色気溢れるお姉様…しっとり穏やかに見えて芯が強くとてもかっこいい、底知れない瞳の奥に決まりきった覚悟が宿っているような、彼女について知れば知るほど惹かれてしまうキャラクターでした。
彼女の魅力は『転生者であること』や『現在の肉体を得た経緯』にも詰まっているのですが、この作品の転生者の成り立ちが本当に深部まで練られており、世界観の良さに唸ります。
転生者が他者の肉体を得る際、肉体の本来の持ち主の人格はどうなるのか? 己を魔物だと称する彼女の抱えてきたもの、彼女が選ぶ結末。リヴィアンさん編に入ってから彼女に惹かれ続け、彼女の全てに魅入ること間違いなしです。
また、リヴィアンさんが関係を持つ男性二名もとても魅力的!
月華園では雪椿の名を持つロキさん!歳下犬系男子でとっても可愛い。愛が重くて嫉妬してしまうこともあり、その嫉妬が原因で切ない関係の道を辿ることになります。それでも、従者としてでも彼女の傍を選ぶ姿が本当に切なくて。
己の犯した罪ともたらされた罰を受け入れながらも儚く微笑む彼が私は大好きです。
そしてレピドさん!歓楽街を治める伯爵家の、体格のいいお兄さんです。一見怖そうに見えるけれど物凄い男前なお方でして。包容力が高く、相手の嫌がることはしない、恋人同士でも許可をとってから触れるなどとても紳士で、メロい…。リヴィアンさんとレピドさんの大人な関係にドキドキします。
長々と語ってしまいましたが、魅力的なキャラクターが多く、絶対に好みに刺さるキャラクターが一人以上いると思います。
また、色気や耽美さだけでなく、不穏や謎も散りばめられ、それらの解や結末に辿り着くのが楽しいストーリー構成になっており、一気読みしたくなったり読み返したくなることもあるでしょう。
様々な人物の関係性、各メインキャラを軸にして風景を変えながら進む物語、色彩豊かな情景がありありと浮かぶ美しい文章。どなたでも楽しめる要素が、点々と散らばっています。読み進めていくとその点が全て繋がっていって、気付けば全ての要素を楽しんでいます。
好みの幅が広がっていく心地良さを、私はこの作品で実感しました。
彼女達が夜天の底で咲き誇る姿。その美しさを多くの方に見て頂きたいです。