家庭内暴力の追及

「「「「......」」」」


俺、凛華、歩歌、風珠葉の四人が無言で焼きそばを食べる。


やっぱり夏祭りの焼きそばは冷凍食品バージョンと違ってできたてほやほやなため病みつきになる味だ。

だが、この空気の中で純粋に焼きそばの味をかみしめられる者はいないだろう。


「な、なんか、思ったより早く終わっちゃったね」


気まずい沈黙を破ったのはまたして風珠葉。

いやー本当にこの中で一番年下なのに頼りがいのある子だ。


それに比べて歩歌と凛華...いや、冷静に考えなくても一番頼りがいがないのは俺だな。


「...浴衣も必要なかったな」


どうやら凛華はまだ浴衣を着させられたことに腹を立てているらしい。


いや、この場合だとただただ颯那に文句を言いたいだけだな。


ちなみにその颯那は今二階でドレスを片付けているらしい。

あの上品なお嬢様のことだ。

自慢のドレスにシミやしわがつくことを許さず、脱ぐときでさえ慎重になっているだろう。


「でもよかったじゃない。夏休みももうすぐ終わるんだし、颯那姉さんももうそろそろ帰るでしょ?」


歩歌の言う通り、もう今週で高校生活最後の夏休みが終わってしまう。


二学期が始まれば颯那は寮生活を余儀なくされる。

ていうかそもそもなんで約一か月間も帰省しているんだよ。

大体帰省ってお盆の間だけとかじゃないの?


「私は別に姉様にとっとと寮に戻ってほしいと願っているわけじゃないのだが」


「嘘おっしゃい。アンタ、颯那姉さんが来てからずっと居心地悪そうだったじゃない」


凛華は絶対に早く帰れと思っているはずだ。

歩歌も口には出さないが、心の中では早く帰れコールを熱唱しているだろう。


「ところで...」


と、ここで歩歌が若干引くような目線を俺に向ける。


「颯那姉さんが言っていた今まで兄さんにしてきたことって...本当?」


「...本当です」


今更誤魔化しても意味はない。


「それって...普通に家庭内暴力とか...そういうのに該当するんじゃないの?」


お、まさか歩歌の口からそんな単語が出てくるとは...

まさか歩歌もDVに興味が出てきたのか?

もしそうなら遠慮なく俺の体で試してくれ//


「アンタは知ってたの...?」


「...私も今日初めて知った。前々から姉様が清人のことを駄犬と言ったり愛玩動物と呼んでいたのは知っていたが、それは単なる姉様の清人に対する嫌味と思っていた。ただ...」


まぁ凛華が今の今まで気づかなかったのも無理はない。

誰だって自分の姉が兄にそんなSMプレイをしていたなんて思わないだろう。


「お、お兄ちゃん...もしかして、この夏休み中もなにか颯那ねぇにひどいことされたんじゃ...」


「そ、それは...」


「無理に答えなくてもいいよ。今ので大体わかったから...」


もちろん夏休み中も颯那にいろいろと可愛がってもらったのは事実だ。

でも別に、そんなのは俺と凛華の間からじゃ普通のことだし、別に家族の問題として扱うほどのことでもないと思う。


「ご、ごめん!!!!!!」


と、いきなり風珠葉が立ち上がり、俺に頭を下げてきた。


「わたしが、電話で颯那ねぇに帰ってくるよう言ったから」


「い、いや、謝らなくていいって風珠葉。別に俺は颯那からの好意を嫌がっていないからさ」


「え?嫌がっていないの」


風珠葉が不意を突かれたかのような表情をする。


...やばい、勢いに任せてつい言っちゃった。


「なんだと?清人、お前は姉様からの仕打ちを苦だと思っていないと?」


「それは、その...」


あー余計なこと言ったせでややこしくなってきた。


「二人とも何をそんなに驚いているの。別に兄様が颯那姉さんとのプレイに興奮するマゾ野郎だっていうのは今に始まったことじゃないでしょ?」


やっぱり歩歌には俺の本質が見抜かれていたか。


「......」


風珠葉は歩歌から出た単語を聞いて押し黙る。


「どういうことだ?」


「凛華姉さん、もしかして兄さんがとんでもないマゾだということに気づかなかったの?

まぁそれも仕方ないわね。姉さんは兄さんとそういうことしたことないんだもんね」


前にふいに凛華にキスされたことはあったが...


「現に前、兄さんの口の中に無理やり舌を入れたときめっちゃ喜んでいたもの」


「舌を入れた...だと?」


しまった!

確か前に桐乃さんと凛華に歩歌に強制的にキスされたことへの尋問をされたとき、舌を入れたとまでは言っていなかった!


「...お前が清人の口をそんなに激しく蹂躙されていたなんて初めて知ったが」


「へぇ~兄さんアンタにそのこと伝えなかったんだ」


ちょっとちょっと!?なんで歩歌までそんなに不機嫌になっているんだ?

もしかして歩歌としては凛華を煽る意味でしっかりとディープキスをしたところまで言ってほしかったのか?


「...どういうことか説明してもらおうか清人」


「あたしも、なんで兄さんが正しく姉さんに伝えなかったのか聞きたいんだけど」


いや、俺もお祭り中ずっとリードを引っ張られていたんだから疲れているんだよ?

そんな相手に二人して詰め寄るのはいささか大人げないんじゃないのかな?


と、そのとき


「あら、これはいったい何の騒ぎなのかしら?」


ドレスを着替え終わった颯那がちょうどいいタイミングで降りてきた。


...今初めて颯那にちゃんとした意味で助けられたかも。

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