こんな時でもおれたちは笑いたい・4


 しばらくみんなで大笑いしていたら、

「あのーお前らさ〜…」と、後ろから声がした。


 4人がそちらを見ると、開け放しの出入り口のところに白人男性が立っていた。

 彼は目の下に隈ができていて顔色がやや悪い。しかしどちらかと言えばイケメンの部類だった。


 ライアンは「何かオレらに用ですか?」と彼に尋ねた。


「オレっちは、隣りのA-14号室のジェフ・デニスってもんだがな……お前ら、さっきからうるせぇーんだよ」


と、ジェフという男が苛々した様子で言った。




『ジェフ・デニス』


 彼は2000年のイギリス・ロンドン出身。 

 実年齢は22歳。


 雄大たちよりも前に、このエドラド国に転移させられていた。

 2ヵ月と20日ほど、彼は雄大たちより早くこちらの世界に居る。


(オレっち…って本当に言う人居るんだな)


 雄大は、ジェフの一人称を聞いて、ある意味で感動を覚えた。


「悪かったよ…」


 ライアンが謝り、その後みんなで「すみません」と謝った。


「今日は訓練も無くて、せっかくの休みなんだよ。寝れないから静かにしてくれよな」


 と怠そうに、ジェフは言った。


「気をつけるよ」

 

 ライアンがつっけんどんに言う。


「何だお前先輩にタメ口かよ!…」

と、一瞬ジェフはカッとなったが「ああ、でも反省室は嫌だからな⋯⋯」と呟き、感情に身を任せるのをやめた。


 しばらく考えた彼は面倒臭そうに「…でも、まあ分かったならいいや」と言い、自分の部屋の方に歩いていった。


「俺たちがうるさかったのは悪いとしてよ

〜! 初対面でお前らはねぇよな〜!」


 ライアンは大きめの声で言った。


 小松が「ちょっと声が大きいですよ」

と、ライアンに小声で忠告した。


 すると、ジェフが戻ってきた。


「その悪口もデけぇんだよ。お前後輩のくせに失礼だな?」


「文句あるならやりますか? 先輩?」


 ライアンが戦闘モードに入る。


 ジェフは頭を掻きむしった後、怠そうに首を横に振る。


「あのな、やらねえよ。ここのルールめっちゃ厳しいんだよ、揉めたら罰則になるからな……労力も使いたくねえし……」


 ジェフはそう言って、ライアンを軽く突き放した。


「1つお前らに忠告しておいてやるよ。まだ訓練も始まってないから笑ってられるかもしれねぇけど、訓練が始まったらそんな余裕は一切無くなるからな」


 ジェフはそれを伝えて、今度こそは部屋に戻っていった。


 ライアンが「白けちまったな」と呟いた。


 結局この日の話し合いは終わり、それぞれ自由行動になった。


■■■■■


 4月24日(日)の雄大のメモ


・魔導具により、言語の壁がない。

・魔導具により、異世界者は20歳前後の肉体になっている。

・魔導具により、文字や数字の表記は異世界者が理解できるようになっている。


(魔導具って、すげぇーな……)


 雄大は、魔導具の汎用性に驚いた。

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