第9話
「——ありがと、びせ。」
天界の雲の上を歩く悪魔は少女の言葉をずっと反芻していた。感謝の理由は未だにわからないが、彼女にとってヴィセは善人となっていることはわかった。
悪魔はなんとなく立ち止まって辺りを見回した。そこに彼以外の人影はない。この場所は日本の天界における行政が使っていると、言われているとかいないとか。少なくとも今この場にはぽかぽかと周辺を照らす太陽と、一面の白にぽつんと寂しそうな黒がいるだけだった。
黒は内ポケットにしまった小瓶を取り出すと暖かな太陽の光にかざした。冷たい月のほうが輝くな、と心の中で思った。しばらく小瓶を見つめていると、
「ふん、善い悪魔で終わってたまるか。」
悪魔は魂だったものを握りしめると、小瓶ごと投げ捨てた。
その行為に込めた期待が、結果的に救われてほしいと願っていることには気づいていない。
「さてと、次はどんな魂に出会えるかな。」
不敵な笑みを浮かべた悪魔は地獄へ姿を消した。
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