第12話  少年達は、休日を欲しがる!

「ハク、どうなってるんだ?」

「多分、コウモリに噛まれたら吸血鬼になるんだよ」

「どうやったら、みんなが元に戻るんだ?」

「コウモリじゃなくて、吸血鬼を倒せば戻ると思う」

「聞いたか、カズナリ? 吸血鬼を最優先で倒すぞ!」

「わかった、ライ。鬼や唐傘を巻きこまないようにしようぜ」

「勿論だ」


 ライ達とカズナリ達は、また低空飛行、吸血鬼に襲いかかる。


「かまいたち!」


 風の刃が吸血鬼を捕らえた。ズタズタになる吸血鬼。だが、何故か涼しい顔をしている。


 カズナリの上に何かが降ってきて、カズナリを乗せているシンはバランスを崩し墜落した。


 カズナリの上に降ってきたのは、子泣き爺だった。振り返ると、赤い目に牙。吸血鬼化している。“あっ!”と思ったら、カズナリは肩を噛まれた。カズナリは意識を失った。ここから、カズナリは吸血鬼化するのだが、その間、カズナリの記憶は無い。カズナリは、シンに噛みついた。


「カズナリ!シン!やられたか」


 ライは健在だった。火炎放射で吸血鬼にダメージを与えようとするが、致命傷は与えられなかったらしい。


「畜生!」

「ライ、これを使え」


上空から何か降ってきた。ライが受け取ると、それは拳銃だった。


「拳銃が効くのか?フミヤ」

「銀の弾丸が出る。心臓を狙え」

「わかった」


 ライは拳銃を撃った。だが、ライは射撃などしたことが無い。当たらない。


「ライ、当たってないぞ、どうする?」

「接近してくれ!ゼロ距離射撃だ」

「わかった」


 ライ達が吸血鬼に接近する。ギリギリまで待って、ライは銃を放った。

 吸血鬼は叫び声を上げて倒れた。


「そもそも、なんで吸血鬼が昼間に歩けるんだよ」

「妖怪も進歩してるってことだろう」


 カズナリをはじめ、吸血鬼化していたメンバーが元に戻った。これで、日本妖怪軍はかなり有利になったはずだ。


 激闘、あたりが暗くなった。カズナリ達は、もう帰宅の時間だ。


「砂かけ婆」


 ライが砂かけ婆に話しかけた。


「なんじゃ、小僧?」

「悪いけど、俺達は帰る時間なんだよ」

「そうか、とっとと帰れ」

「後は任せた。頑張ってくれ」

「おうよ、任せておけ。お前達が吸血鬼を倒してくれたので助かったわい」

「みんな、俺達は退くぞ」

「わかった」


 いつもより少し遅い時間、カズナリ達は解散した。


 翌日。外に出たら、何もいなかった。日本妖怪と西洋妖怪は、どこに行ったのだろう?


「ハク、これはどういうことかな? 日本妖怪と西洋妖怪が相撃ちになったのかな?」


 ライが、博学のハクに聞いた。


「まさか、こんなにキレイに相撃ちにはならないだろう?」

「じゃあ、どうなってるんだ?」

「俺にもわからないよ」

「お、一匹、何か飛んでいるぞ」

「カラス天狗だな、今の状況を聞いてみよう」

「カズナリ、行くぞ」

「わかった。シン、ライの後ろにつけてくれ」

「おう」

「おーい、カラス天狗!」

「なんだ、お前らか」

「今日は、どうして誰もいないんだ?」

「昨日、お互い激戦で疲れたからな、話し合いで今日は休戦することになったんだ」「なんだ、そうだったのか」

「明日からまた戦う。お前達も、明日来い」

「わかった。みんな、今日は解散だ」

「ちょっと待ってくれ、ライ」

「なんだ、カズナリ?」

「休日の件で、提案があったんだ」

「何だ?」

「今、毎日出動してるだろ」

「ああ」

「定期的な休日を作らないか?」

「定期的な休日?」

「例えば、土日と祝日は休みにするとか」

「サラリーマンかよ!」

「いいじゃないか、サラリーマンでも」

「俺達は正義のヒーローだぞ」

「毎日の出動だと、疲れてしまって学校の元気ゲージが低くなるんだ」

「だから、どうした?」

「クラスメイトに心配されてるんだ、嘘をつき続けるのもしんどいんだ」

「元気ゲージが低いくらい、気にするなよ」

「俺はカズナリに賛成だ」

「なんだよ、ハクまで」

「週に1日でもいいから休みたい。正直しんどい」

「ハクもかよ」

「俺も、カズナリやハクに賛成だ」

「なんだよ、シンもかよ」

「休日は必要だよ」

「フミヤ達は、どうしてるんだ?」

「完全週休2日だよ」

「レッカは?」

「土日と祝日は休みだ」


 班によって違うらしい。


「わかったよ、とりあえず週休1日から始めよう」

「何曜日にする?」

「日曜でいいんじゃないか?」

「適当だな」

「とりあえず日曜で決定だ!」

「良かった。ようやく休める」

「俺達、せっかくガーディアンとして有名になりかけているのに」

「ライ、ブツブツ言うなよ、ヒーローにも休日は必要、それが現実なんだよ」

「わかったよ」



 ライは少し不機嫌だったが、他のメンバーは上機嫌だった。







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