第30話  修司、ハーレム!

 修司にとって恐怖の日。それは女性ばかりのプールの日。千春がピンク、千夏が青、千秋が赤、千冬が黒、さくらが白、桔梗が緑、みんなビキニだった。この女性6人が更衣室からゾロゾロ出て来たとき、修司は気を失いそうになった。


 プールに入ると、新人達が修司に急接近。4人が次々と修司にしがみつく。修司はずっと心臓が破裂しそうな思いをした。


 1番修司に抱きつくのは千春だった。


「課長、私、Fカップなんですよ!」

「千春、甘い甘い、私はHよ!」

「嘘! 千夏はHカップなの? 何よ、Fの私が完璧に負けた!」

「うふふ~甘い甘い~私はIなのよね~!」

「千秋、オ〇パイの化け物じゃん! 完敗だわ」

「オ〇パイの化け物ってヒドイ~綿その胸は~形もキレイなんだからね~!」

「千春、Cの私はどうしたらいいの?」

「おお! 千冬カワイイ! 私、これから何があっても千冬の味方になる」

「なにそれ! そんな味方は要らないし」

「ああ、Fカップがこんなに簡単に負けるなんて、信じられない」

「だから、Cの私はどうなるのよ-!」

「いいわ、女性の価値は胸では決まらないもの、ねえ、課長?」

「そうだね、胸は、好きな女性の胸が1番いいと思うよ」

「さすが、課長! 課長のそういうところ、好きです-!」


 修司に抱きつく千春だった。千冬がC、弥生がD、さくらがE、千春がF、桔梗がG、千夏がH、千秋がI、“これでAとBが現れたらコンプリートだなぁ”と、修司は思った。だが、同時に“これ以上、女性キャラが現れたら無理!”とも思った。


 さくらと桔梗は新人4人の若いパワーに圧倒されて、遠巻きに修司達を見守っていた。修司は、女性恐怖症を新人に知られるのを嫌がっている。我慢している修司のことを心配しながら見つめる。


「課長、私のCカップの力を感じてください」


 修司の背中に千冬が抱きつく。


「うわ、青田さん、胸、胸、胸が当たってるよ!」

「見たか、千春! Cカップでも攻撃力はあるのよ」

「千冬、私と代わりなさい」

「だめ~次は私~!」

「うわ! 赤井さん、胸! 胸! 胸が当たってるよー!」

「課長~千冬とどっちが破壊力がありますか~?」

「そんなの比べられないよ、両方破壊力はあるよ」

「うわ、千冬と互角なんて、納得出来ません~!」

「みんな、それぞれに魅力があるよ」

「課長、この4人の中で誰が1番魅力的ですか?」

「黒木さん、みんなタイプが違うから、誰が1番とかわからないよ。みんな魅力的だよ。みんな、今までかなりモテてたんだろうね」

「私はモテましたよ-!」

「私だって、狙った獲物は逃さなかったんだから。モテたし」

「私も~多分、モテてたと思います~何回も告られました~!」

「私だって、Cカップだけどモテてきたんですよ」

「今年の新人はスゴイね、じゃあ、僕はちょっと休むから4人で楽しんでね」


 我慢が出来なくなって、修司はプールから上がって脱出。ビーチチェアに寝転がって休んでいるフリをした。さくらと桔梗が心配して駆けつける。


「課長、大丈夫ですか?」

「相沢さん、大丈夫?」

「もう……死ぬ」

「ああ、やっぱり疲れ果ててる」

「今日は早めに帰りましょう。とにかく早くプールから出ないとね」

「まさか、新人4人があんなに積極的に迫ってくるとは……なんで? なんで僕ばっかりこんな目に遭うの?」

「単純に、課長がモテてるだけだと思いますけど」

「本当は、男だったら嬉し過ぎる状況なんだけどねぇ」

「課長、私達が守ります」

「うん、桧山さん、守ってね」

「私も出来るだけ守ってあげるわ」

「部長、よろしくお願いします。僕、もうダメです」


「皆さん、そろそろプールから出ましょうか?」

「「「「はーい!」」」


 更衣室まで、修司は女性(美人)6人を連れて歩いていると、やんちゃそうな3人組が立ち塞がった。


「お兄さん、何人美人を連れて歩いてるの? まるで大名行列だね」

「6人ですけど」

「羨ましいなぁ、俺達にも美人をわけてくださいよ」

「そんなことは出来ませんよ」

「お兄さん、知ってます? 世の中でモテる男は、強い男なんですよ」

「それで? 君達は強いの?」

「俺達は強いよ。お兄さんは女を置いて帰ってくれないかな?」

「そんなことは出来ないよ。こちらの女性達は大切な仲間ですから」

「じゃあ、痛い目に遭ってもらいましょうか?」

「いいよ、強いよ、僕も」

「じゃあ、やってやるよ!」


 3人の真ん中、リーダーらしい男が修司に殴りかかった。修司は避けて、その腕を掴んで“一本背負い”。男は地面に叩きつけられた。リーダーの両横の男、右側の男は桔梗の上段回し蹴りで、左側は千春の上段回し蹴りで倒れた。


「部長、何を習っていたんですか?」

「私は空手。合気道も習っていたけど。黒木さんは?」

「私はキックボクシングです」

「あ、プールの監視員が来たわね」



「「「「「「乾杯-!」」」」」」

「あー! 美味しい」

「新人の皆さんは、飲める方なの?」

「かなり飲めます」

「酔いつぶれたことは無いです」

「いくらでも飲めますよ~♪」

「お酒は強いです」

「じゃあ、飲めないのは相沢さんだけね」

「大丈夫ですよ、僕はウーロン茶で酔えますから。営業の接待も、ウーロン茶を飲みながら盛り上げていましたからね」

「まあ、相沢さんは特殊な人だから、みんな、気にしないように」

「でも、本当にみんな課長が好きなのね」

「「「「大好きでーす!」」」」

「でも、仕事のことは基本的に桧山主任が対応するからね」

「いやー! じゃあ、プライベートなことは課長に相談します」

「いや、僕じゃなくてもいいんじゃないかな? 部長は頼りになるよ。部長にも相談すればいいよ」

「「「「はーい!」」」」


 そこで、千夏が自分の携帯を見た。


「課長、早速、相談しないといけないかもしれません」

「どうしたの? 白木さん」

「また元彼からのストーカーメッセージが届きました」

「あれ? この前、僕が対応したはずなのに」

「“やっぱり、千夏のことが忘れられない”って書いてあります」

「じゃあ、今度は、桧山さんと部長にも立ち会ってもらおう! 桧山さん、桔梗さん、いいですね?」

「構わないわよ」

「かわいい部下のためなら」

「じゃあ、明日、話をしよう。こういうことは、早く解決した方がいい」

「じゃあ、明日の午後、緑川を呼び出します」

「うん、今度こそ徹底的にストーカー行為をやめさそう」

「白木さん、他には何か書いてあるの?」

「それが……部長、すみません、言えません。夜の営みのことが細かく書いてあります。変態です。変態メールです」

「それなら、ますます放っておけないわね」

「じゃあ、14時に○○駅でいいですか?」

「いいよ」

「いいわよ」

「それで決定にしましょう」



「ただいま」

「お帰りなさーい!」

「うわ! なんで?」

「気分だけです。私もプールに行きたかったから」



 弥生は紫のビキニ姿で待っていた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る