長すぎる悪夢の始まり2

「あれ、君、1人?」

「え?」


 何故か、黒髪に眼鏡姿の男性が話しかけて来た

 なんだ?不審者?いや、ナンパか?

 私に都合の良い夢だとしたらあり得そうだけど、顔が好みじゃない。イケメンだけど


「親御さんとか友達居ないの?」


 友達‥?

 あ、しゃがんでたから心配してくれたのか

 まぁ私、同年代と比べても見た目が幼いし、実際未成年だし、その心配は合ってるのか


「居ないです。1人です」

「ひとり‥‥そっか。ここは危ないから、ちょっと席まで移動しよっか」


 む。どうしよう

 これが猟奇的殺人犯だったり、私の身体を狙ってくる奴だったら危ないな‥

 彼の表情から本気で心配してくれてるのは分かるけど、男性だしな‥

 うーん‥‥

 ま。万が一何かあっても夢だし、いっか。流石に妄想がすぎるし


「分かりました‥でも、あの。私初めてで、何処に席があるのか分からなくて‥」

「え?‥‥あぁ。そうだね。君は、こっちの方かな」


 立とうとしていた私の手を軽く取って、指を指して道を示してくれた

 指の先には植物のトンネルがあり、生きてるとは思えない蝶が、ヒラヒラと踊っている

 あんな道を通るなんて、えらく紳士的でロマンチックな男性だ

 余計に怪しくなって来たぞ

 凶悪な殺人鬼は優しい人を装って、優しい言葉を使うんだ

 うーん、あんなことがあったから敏感になってるのかな

 人を疑いすぎるのもよくないし、このままにしよう


「チケットって親御さんが居ないと買えないはずだけど、1人で買えたの?」


 あー‥なんて言おう

 どうやって買ったかは私も分かんないんだよね‥嘘は気まずいし‥それっぽいこと、適当に言うか


「はい。私には甘いので」

「ふーん‥‥」


 じっと、男性が見つめて来た

 それからは話すこともなく、気が付けば、植物のアーチを通り抜けていた

 なんでろう‥?回答としては、そんなにおかしくない気がするんだけどな‥


 あ、これ私の死亡フラグたった?

 こんな豪華客船(船?)に娘を1人で乗せるような馬鹿で金持ちな親を想像したのかもしれない

 いやー金って恐ろしいらしいからなー。ガラッと態度変わったら怖いなー‥

 ‥あれ

 そういや私、この人の名前知らないな


 名前を聞こうと見上げてみると、男性は遠くを見ていた

 視線の先を見ると、陽の光を反射した窓ガラスしか無い

 他の事に気を取られている人に、話題を振るのはちょっと‥いや、だいぶ気まずいなぁ‥

 けど、聞いといた方がいい気がする。何かが進めば、夢が終わる可能性もあるし


「あの、そういえば、あなたの名前を聞いてなかったんですけど、なんて言うんですか?」

「‥そういえば、言ってなかったね。私は、ヴァルツって言うんだ」

「ゔぁるつ‥‥」


 日本語じゃないし、聞き馴染みもないな

 まぁ、特に意味もなさそうだし、頭の中で考えた造語だろう


「ヴァルツさんは、なんで私を案内してくれるんですか?」

「‥‥‥‥」


 特におかしな質問でも無いだろうに、ヴァルツさんは立ち止まってしまった

 何かあるのかと地面の先を覗いて見るけど、何もおかしなものは見えない。ただの薄気味悪い真っ暗な道しか無かった

 いや、もしかしたら道ではないかもしれない。道だとしたら暗すぎるし、何故か空間が掴めない

 もしかして、行き止まりにいってしまったから、気まずくて黙ってしまったんだろうか?

 まぁ夢ってこう言うことよくある。100パー私のせいだから気にしないでほしい


 何に気を遣っているんだ私は


「‥‥‥‥‥」

 流石に沈黙が長い‥

 夢とは言え、気まずくなってきた。どうにかして会話を繋げよう


「行き止まり‥ですかね?ヴァルツさん、一回引き返してみます?」


 我ながら言うのはあれだが、けっこう良い助け舟なんじゃないか?

 これで進んでくれるといいけど‥


「いえ、このまま進みましょう」


「え?」

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