第23話 戦場コテージ②

喜多きたさんも、優太ゆうた君もC組皆と仲良くなれたみたいだ。

大庭おおばさんの配信は続く。

「最初は障がい者、と聞くと戸惑うかもしれないが、それは当たり前だ。よく知らないからな。百聞は一見にしかずっていうだろう?

自分とは違う人とも、会ったり話すことが大事だ。

俺もな、最近車椅子に乗っている奴と出会ったんだ。車椅子って聞くと、のんびり動いているイメージがあるだろう?

所が奴はびゅんびゅん動く。びきうりしたよ。ガチで。

この動画をたくさんの人に広めてくれ。…ん?ファンサしろ?

仕方ないなあ。…これからもフォローよろしく頼むぜ!ってことで今回の動画はここまで。あばよ」

「…疲れた」

大庭さんは一気に力が抜けていた。サングラス投げ捨てる。

「お茶どうぞ。チョコレートもいる?」

「もちろん!」

疲れたって言ってる割に声出てるじゃん。

「車がこの敷地内に入ったらしいぞ!山のふもとグループからの連絡さだ。皆、定位置についてくれ」

「分かった、ほまれ隊長」

武居たけすえさんに隊長呼びされてよ、誉。ふもとグループは八人いるから…(川出かわでさんはここにいる)今は二十七人ここにいる。

定位置は今日決めた。私は三階担当。最上階で、奴ら(へファイトスの…は長いので奴らにした)を必ず捕らえなければいけないから、最も重要だ。圧がかかるなあ。

『奴らがここに来るまで、後五分も無い!』

賢悟けんご君がかっこいい気がする。スマホ越しに堂々と立っている賢悟君が想像できるよ。

『全員隠れろ!』

私は急いで近くにあった段ボール箱で身を隠した。

「ここか。俺達に反旗をひるがえしている奴がいる所は」

「そうらしいです。とっとと捕らえましょう」

武居さん電話が入った。彼は一階に隠れているのだ。

『男…若者、五人だ。黒い上着を着てる奴が五人いる。

今このコテージじゃなくてスイートピー②に入って行ったぞ!正面入口から。

今は一階の全ての照明を落として真っ暗にしてある。段ボール箱や木の板の散らかしバリケードに奴ら手こずっているらしい。あれは…皆で持って来たゴミをあるだけ散らかしただけだけだし…』

思ったよりも高妻こうづまさんの解説、上手いかもしれない。よく考えたら、真っ暗な中で喋ってるの奴らに気がつかれそう。あ、違う。

高妻さんと武居さんは、スイートピー②の外の窓から観察する係だったから、しっかりと中が見えているんだった!

『あれ?誰か一人先に行ったらしい。…違う。奴らは五人のままだ。もしかしたら誰かここに来ちゃったのかな…。お!よし!奴らを二人捕まえたよ!谷島たにしまさんと能見のうみさんと西にしさんが奴らの内の二人がゴミにつまずいて転んだ所をベルトでしばってた!』

制服のベルトはそういう使い方をする物じゃないよ!ってか長さは足りたのかな…。高妻さん。教えて下さい。

『六人のベルトをつなげれば、長くなるんだね!』

高妻さん達の中継はここで終わった。


「残り三人か…。二階組、準備は終わったか?」

『もちろんですよ!』

誉はすっかり気分は隊長!になってる。かおりも誉のノリに乗らなくていいんだよ。いつもこんな感じか、香は。

「武居さんがさっき言ってた誰かって誰だろう」

私はやたら気になっている。[誰か]。誉は困った顔をした。

「分かんねえ。少なくとも、へファイトスか奴らと関係がある人物なんじゃないかな」

「関係がある…か。直接会ったことがあるとか、そんな感じ?」

茉奈まなもよく分かっていない感じだ。私も分からない。

「今の所…その[誰か]はこのスイートピー②の中にいるけど、誰も見つけてないんだよね。悪いことしてる訳じゃないし、気にしなくていいんじゃないかな」

「優太君が言うんじゃそうかもしれないよ」

ここでの優太君はとても頼もしかった。自分の意見をはっきり言って、細かい所まで気を配れて、何よりエネルギーで満ち溢れている。とても年下とは思えない。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る