第23話 安全地帯での訓練
2人と話し合った結果、安全地帯の中でとりあえず丸1日隠れて捜索隊をやり過ごすことにした。
俺たちは、この後のサバイバルというか、安全地帯で丸1日過ごすのに備え、少しでも快適に過ごす方法を模索していた。
外にいる捜索隊がどれだけ粘るのか?どのような手を使って捜索するのかというのが分からないが、今は動くわけにもいかない。
ここでじっと耐え忍び、力を蓄えるしかなかった。
ミカは俺に空手の基本を教えてくれることになった。
その間、邪魔になるからとカナエは安全地帯の角で大人しく座り、その様子を見ていた。面積は3mx3mと狭いのでそうするしかなかった。
約5.5畳の正方形の部屋って、使い勝手があまり良くないんだよね。地方のマンションや中流家庭の戸建てでよく見られる子ども部屋の大きさに相当するから1人だと問題ないが、3人が、それもそこに用を足すスペースを含めないといけないものだから、圧倒的に狭いとしか言えない。おそらくスキルの想定外の使い方だと思われるし、プライベートなんて皆無だ。
「やまっち、何をするにも基本が大事だから、反復動作で体に覚えさせなきゃよ。私が手取り足取り教えてあげるから、しっかり体に覚えさせなさい。空手の基本といっても、これをちゃんとやれば剣や槍を使うのにも役に立つんだからね!」
空手の基本を教えてくれていたミカは、剣や槍を使うときにも同じように体の使い方が重要だと教えてくれた。
「やまっち、私たちがギルドで教わったことを教えるから、一緒に練習しようよ。基本が大事だし、槍や剣にも通じる基本があるの!幸い今は時間はあるから頑張ろ!」
カナエも加わり、彼女たちはギルドで学んだ技術や知識を俺に伝えようとしてくれた。しかし、その真剣な眼差しに応えるように頑張ろうとするも、俺は次第にしょんぼりしてしまった。
ミカやカナエには確かに元々持っている技術があるようたが、俺にはそれがないことに気付いてしまっのだ。
「俺には・・・技術がないから、2人が俺から教わることは少ないよな・・・いや皆無か・・・料理もできないし、整理整頓も苦手だよ。なんか2人に迷惑かけてばっかりだ・・・」
そんな俺の落ち込んだ姿に、ミカがすかさず反応した。
「なにしょんぼりしてんのよ!スキルを取れたりするのはあんたのおかげなんだし、今こうやって無事なのは紛れもなくやまっちの力よ。ほら、今はせっかく痩せて格好良い顔しているんだから、もっとしゃきっとしなさい!」
「そうよ、やまっち。今の貴方は十分強いし、私達はやまっちのおかげで清い体のままなのよ。少しは自信を持って!少なくとも私とミカを守りきっているのよ」
カナエの言葉に少し救われた気持ちになるが、まだ完全には立ち直れない。そんなやりとりが続く中、俺は疲れからか少しだけうとうとしてしまった。そして、そのとき夢を見たんだ。
訓練中に胸に触れてしまい、体が反応してしまった。それをミカに悟られてしまい土下座をしたんだ。
「ふふ、やまっちも男の子なんだね。そんなふうに私たちのことを、女として見ていたんだ?」
「ねえ、もし我慢できないなら、少し・・・触らせてあげようか?」
「カナエと2人きりにしたら、やまっちはどうするのかなぁ?」
俺の頭の中に浮かんだそんな甘い誘惑の言葉に、夢の中の俺はただ困惑するも、欲望に負けてその胸に手を伸ばし、触れようとした。
俺は2人のことが大切だけど、異性として意識してしまっていて、誘惑には勝てそうにない・・・
もう少しでその魅惑的な胸を堪能する直前、景色が変わった。俺はウトウトしていたようで、変なというか、男の欲望丸出しな夢を見ていたようだ。
だが、夢から醒めて現実に戻ると、そんな余裕も消し飛んでしまった。目が覚めてぼんやりとしている中、俺の口からぼそっと出た言葉により動きがあった。
「これ・・・キューブの構造になってるのかな?よくわからないけど、動かせたりしないのかな…?」
独り言のつもりだったが、その言葉を聞き逃さなかった2人がすぐに反応を示したのだった。
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