天哉と真由理
結局真由理と仲直りできずじまいで放課後迎えてしまった。真由理はとっとと部活の方に行ってしまった。銀仁朗も同じく部活であるため、1人で寂しく帰ることにした。
心が晴れずにモヤモヤしている。傾いた太陽が照りつけている。
そもそも真由理が怒っている理由がうっすらではあるが分かる気がする。恐らくこれが逆であったら俺も怒るかもしれない。
幼馴染であるから?それとも異性として好きだから?どこかピンと来ない。
未来視ができるんだったらもっと先の未来が見えたらいいのにと思ってしまう。未来のつまり本当の意味で大人となった自分自身がどうなっているのか。せっかくならそこまで見れたらいいのに。
そんなこと考えながら帰宅している。
溜め息が漏れて幸せが逃げていく気がした。そんな沈んだ気持ちの俺に背後からツンと何かが当たった。
「うわっ?ま、真由理?」
驚いて振り向くとそこには何故か真由理がいた。
特に怒っているようでもなくかと言っていつものように笑顔という訳でもない、真顔の真由理がそこにいた。
「たっくん。一緒に帰ろ?」
「え?あぁ、いいけど…部活は?」
本来ならまだ部活が終わっているような時間ではないはずである。それにも関わらず真由理がいたのだ。
「別にいいじゃん。なんだか部活やる気分じゃなかったから…」
「そうか…」
やっぱり怒ってるのかな?いや怒ってるよな。
でもそれだったら一緒にに帰ろうなどとは言わないはず。何かしら心境に変化があったのだろう。
隣にやってきて一緒に並んで帰る。流石に無言はきついので話しかけることにした。
「真由理」
「な〜に?」
「昨日はごめんな…」
学校の時は全く相手して貰えなかったからもう一度謝罪をする。
「謝らないで〜。だってたっくんが悪いことした訳じゃないから」
「いや、でも…」
真由理から帰ってきた言葉意外なもので少し驚いた。
「だってさ〜。私とたっくんは付き合ってるわけじゃないでしょ〜?だから謝る必要なんかないよ?」
確かにそうだが、何故か申し訳なさを感じてしまうのである。真由理の言う通り別に謝る必要なんかない。だって付き合っていないのだから。
でも心の奥に何か引っかかるものがあるのだ。
「そうだけど…」
「それとも私のことが好きで負い目でもあるのかな〜?」
真由理がクスッと笑ってそう答えた。
何故かドキッとしてしまった。彼女からきた不意打ちの返しに驚いたためか、それとも本当にそうなのか自分自身よく分からない。
今までずっと近くに幼馴染であり、その日常が当たり前に存在していた。
もし今の感情が真由理のことを好きという感情ならば?
「冗談だよー。びっくりした?」
「ははっ。びっくりするだろ」
笑っている真由理の瞳の奥はどこか本気な目をしているように感じた。
いや、俺がそう見えるだけなのかもしれないが。
2人で帰る帰り道はいつも見慣れている景色であるものの、どこか色が鮮やかに感じて見える。
普段であればそこまで感じないが今日は特に色という色が目に入ってくる。
そんな俺に真由理は質問してきた。
「たっくんは浅倉さんのこと好きなのかな〜?」
からかっているかのような笑顔。でも瞳だけは違う。
「好きっていうか、憧れなんだよ」
「うん。知ってるよ〜?いつも無意識に目で追いかけてるもんね〜?」
普通にバレてる。というかそんなに無意識で浅倉さんのこと見てたんだ俺。
「でもさ〜たっくん。好きと憧れって一緒じゃないの?」
「少し違うかな。憧れは好きと≒かもしれないが俺の中で恋愛的な好きにはならないと思う」
俺の説明に納得していないような顔をする真由理であるが何か気づいたような様子でこちらを見てくる。
「じゃあ…私のことは好き?」
「え?」
その質問に立ち止まってしまう。
その時目の前がまたフラッシュした。この現象が起きたということは未来視がはじまったのだ。
「たっくんのバカ!!」
涙を流す真由理が走りだした。しかしよく周りを見ていなかったのだろう。
歩行者信号が緑のカチカチから赤へと変わった所を走った。そんなこと知らない。
真由理に右折で曲がろうとした車がやってきた。
ドンという鈍い音とともに真由理の身体が飛ばされたのだった。
未来視はここで終わった。
現実に引き戻されて元の場面に戻ってきた。
答えを求める真由理はいつも真由理の穏やかな表情とは違う真剣なものであった。
もし俺の返答が悪ければあの未来が起きてしまう。俺はそうならないようにしなければならない。
「好きかな。幼馴染として…」
あの未来視の俺がどう言ってあのようなことが起きたか分からないが、俺は嘘偽りのないこと彼女に向けて伝えた。
「そうなんだ…」
真由理は複雑そうな顔をしていた。
俺は言葉を間違えたのかと思った。
「私と浅倉さんだったら…どっちが好き?」
なるほど…。おそらくこの質問の返答が次の未来に繋がるのだと思った。
浅倉さんは俺にとって憧れの人で無意識で目で追うほどである。対して、真由理はいつも傍にいてくれる一緒にいて心地の良い幼馴染である。
俺が大怪我した時もいつもお見舞いに来てくれた、真由理は思いやりのあるいい子である。
俺はそんな真由理が涙を流す姿を見たくない。
「真由理かな」
「…っ…!?」
真由理は俺の返答驚きの表情の見せた後に頬に両手をあてていた。
彼女の頬はみるみる紅く染まっていく。
「た、たっくん…?それほんと?」
「あぁ、ほんとだよ」
俺から顔を逸らして俯いている。俺も恥ずかしくなり違う景色を見て紛らわす。
嘘は言ってなく。自分の発した言葉通りである。
「たっくんのバカ…」
ボソッと真由理の言った言葉を聞きそびれてしまった。
「な、なにか言った?」
「なーんにも?」
ニコッと真由理はいつもの見る笑顔を見せてくる。心無しかいつもりより嬉しそうな顔をしていた。おそらくあの未来は回避したようだった。
真由理は俺の手を引っ張って行く。
「たっくんさ、今日私の家寄っていかない?」
「え?なんで?」
唐突の誘いにびっくりする。
ただ真由理の俺の腕を引っ張る力はなかなかに強い。
「いいからいいから」
楽しそうにそういう真由理。別嫌という訳では無いのだが、真由理の実家は安城会館という名前の老舗の旅館であり、真由理そこの娘である。
俺は乗り気ではない理由がある。何せあの人がいるからだ。
そんな俺の意志とは関係なく真由理は俺を家へと連れていったのだった。
「あの2人…何してるの?」
俺は知らなかった。俺たちがやり取りしている背後にいる人物に。
「天哉くん…どうして…」
悲しげな声で天哉の名前を呼ぶ人物。それは天哉の憧れの人物であることを。
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