かい猫バイツ!

じょーこねみぎー

第1話 決意



 遂にこの日がやってきた。

 


 職場の先輩にブラックバス釣りに誘わられて以来、俺はバス釣りにハマってしまった。

 竿やリールなどの必要な道具を買い揃えては休日になると、早朝から夕暮れまで釣り歩く日々を過ごしていた。


 ただ、ここ最近は仕事が多忙であまり釣りに行く時間が作れてない。それに加え、この1〜3月の寒い時期は釣りに行っても殆どブラックバスは釣れない。だから今年に入ってからと言うもの、指で数えるくらいしか釣りに行けてない。


 しかし、5月から茨城県土乃浦市の職場に移動が決まったこともあり、俺は通い詰めていた釣り場の一つである“土乃浦港”付近のアパートを借りる決意をした。

 その方が釣りに行く時間を短縮して、すぐに釣りできる。俺は、今まで以上に釣りする時間を増やしたかった。


 今日で4月。空き物件がまだ残っているのかはわからない。そんな不安と期待に胸を膨らませながら不動産屋の前に俺は立っていた。


 ガラス張りの外装には物件案内の張り紙が所狭しに貼られてある。中にはデカデカと赤い文字で契約済と書かれてあるものもあった。しかし、それ以上に一際目立つ『怪猫注意!』と筆で大きく書かれた張り紙に目が止まった。


『カイネコ?チュウイ?』


 俺は小声で読んだ。あまり見慣れない漢字にちょっとした不安にかられたが、すぐに気持ちを切り替えて、目の間のドアに手をかけた。


 ドアを開けて中に入ると、メガネをかけた40代くらいのおばさんが俺を見るなり笑顔で会釈してきた。


「もしかして、外堀好夢さんかしら?」


 俺は返事をした。それからおばさんは俺を席に案内して、お茶を出した。俺は一口だけそれを飲み、溜め息をついた。

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