第9話 距離感がバグっている幼馴染が、俺の部屋を占領している!

「これ、食ってもいい?」


 ある日の休日。

 安らぎの時間が蝕まれ、自室にいる柊廉人ひいらぎ/れんとは、ある悩みを抱えていた。


「い、いいけど……また俺の家に来たのかよ」


 現在、廉人の自室のベッドに座っている幼馴染――朝比日葵あさひ/ひまりは昔から近所に住んでいるのだ。


「いいじゃん。ダメなの?」

「そういうわけじゃないけど。もう少し遠慮とかはないのか?」

「遠慮? 私たちって昔からの仲じゃん」

「そ、そうだけど……さ」


 幼馴染と言えば、もう少し大人しかったり、ある程度の距離感というものを理解しているはずだ。

 だが、彼女はそんな事はなく、距離感がバグっているのだ。


 日葵は廉人のベッドで横になると、漫画を読み、ポテチのお菓子を食べ始めていた。


 彼女は暇さえあれば、勝手に家に上がり込んできたりと、殆ど遠慮がない。


 昔は会話できる子がいるだけでも良かったのだが、今では本当に迷惑していた。


 何かしらの方法で報復させた方がいいと、心の中で計画を立てているのだが、良い案を見つけられずにいたのだ。


「というか、あんたってさ、彼女できた?」

「え? ま、まだ……だけど」

「じゃ、童貞って事ね。へえ……」


 彼女の声色が変わった。


「童貞だから、いつまでパッとしないんでしょ。服もダサいし」

「うッ……」


 それは俺には効いてしまうセリフだった。

 日葵に弱みを握られている状況では、報復どころか勝つことさえもできないらしい。


「じゃあさ」


 日葵は漫画を閉じ、ベッドから起き上がる。


「彼女がいないなら、私が付き合ってあげよっか」


 と、彼女は意味不明な事を言ってきたのである。


 廉人の悩みがまた一つ増えた瞬間だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る