第19話
「……そうして、最後に戻ってきた。ここ、トルーズク大陸にねい。……あれっ」
「俺以外は寝ちまったぜ」
「えっへへ、そうかい。ま、退屈なもんさ。おじちゃんの話なんてな」
ルノルド以外は眠ってしまった。ここまでの旅路を考えれば、疲れ果ててしまうのも分かる。家に来る途中で買った夕食は皆で平らげてしまった。
「いや、興味深かった。あんたは魔族なんだね」
「魔族?」
「ああ。あんたは見たところ40代だろう。しかし、40年以内でこんなに濃い冒険が出来るわけはない。だから、300年……いや、500年生きられる希少魔族だな。それで400年以上生きていると見た。希少魔族には鳳凰族や竜族がいるが、あんたは何なんだ?」
「……ナイショ」
「……」
「そんな怖い顔しねぇでくれ。おじちゃんはねい、お前さんたちのことを応援したいんで……旅する若者を、ねい」
「昔に旅をしていたから?」
おじちゃんが頷く。
「そうだろうなあ……あ、そうだ。お前さんたちは知ってるかい?あるウワサ……」
「ウワサ?」
「そう。あのねい、『不老不死』を手に入れられるってウワサなんだがねい?」
(不老不死?まさか、『永遠の機械』と関係がある……!?)
ルノルドが考える。だとしたら、そのウワサの詳細を知りたい。
「自分の中の一番の欲望を叶えられなくなる代わりに、不老不死を得られる……っていうウワサさ」
「……欲望と、不老不死……?」
「そう。不老不死を得る代わりに、一番欲しいものを諦めるのさ」
「なんだそれは。そんなに欲しいかね、不老不死が」
「えっへへ、、そうだよねい。ルノルドくん、お前さんは……何が一番欲しい?」
「一番欲しいものって……そう言われると意外と出てこないな」
「……普通の人はそうだ。こんなに静かな家で、こんなにゆったりと座っていれば、自分が一番欲しいものなんて思いつかないもんさ」
「……」
「あ、すまないねい。また取り留めもない話をしちまったよ。今日は泊まっていきなよ。皆も疲れてるみたいだし……あ、おじちゃんのこと疑ってるかい?本当にただの魔族だからさ、大丈夫。いやあ君の言う通り、400年くらい生きてる魔族なんだよねい。おじちゃん」
「魔族だったのか。そうだな、皆が起きないから泊まって行くことにする。少し世話になろう」
この男が何か企んでいたら、自分が皆を守ろう。それくらいなら出来るはずだ。ルノルドは心の中でそう思った。
すっかり日が落ちた。布団がないので床にそのまま転がっているが、ルノルドは皆を見守りながらも自分も目を閉じる。
「……」
(『不老不死になれるウワサ』か……。中央に行きながらその詳細を調べてみよう。これからは情報収集もしながら旅をしなくちゃだ)
(リイコの仲間が来なくなったのも気になる。諦めたのか……?まさかなァ)
(マウマウの正体も分からない。なんだかチャラチャラしててどこか信じられないしい……イマドキの若者ってみんなあんな感じなのお……?)
グルグルと考えていると、扉が開く音が。
(あの男!何か企んでいるのか……!?)
薄目を開ける。足音が遠のいていく。部屋から出たようだ。
(なにか取りに行くのか?)
音を立てないように慎重に起き上がり、後を追う。男は廊下の床を開けて、そこに潜り込んだ。
(なっ……!?地下室!?そこに武器を隠しているとか……!?)
悪い方向に考え出すともう止まらない。ルノルドも潜る。
「うっ、狭い……!……あ!」
「る、ルノルドくん……!?」
気づかれてしまった。
「えっへへ、追って来てたのかい。おじちゃん全然気づかなかった」
「……武器でも取りに行ったのかと思ってね」
「信頼がないなあ……ま、見つかっちまったなら仕方ねぇ」
「ほ、本当に武器なの!?」
「うん。見てよこれ」
「あっ……!!!」
地下室の奥。そこにあったのは、一本の刀。
「これは、ニチジョウの刀?いや、違う!」
「よく分かったねい!実はこれ、おじちゃんの宝物なのさ!僕の故郷でつくられた刀なんだ」
「ニチジョウじゃないところで刀がつくられているの?」
「……」
男はそれには答えず、刀を持ち、ルノルドに差し出した。
「これを、お前さんに渡してぇのさ。抜くことがねぇならそれで良いが……もし何かあったときに使ってやってくれ。こんなところであと『何百年も』腐らせておくには惜しい武器でさぁ」
「俺に?」
「うん。なんとなくだが……ただのおじちゃんの勘なんだが、お前さんたちに必要になる気がする。だから、」
「ありがとう。だが、受け取れないな」
「え、何で」
「……あんたが使うべきだぜ。それ。『必要』っていうのは、あんたの敵のためだろう」
「……!」
「許せない誰かがいるな。そしてそれはあんたに冒険家の夢を諦めさせたヤツだろう。あんたはそいつのせいで、冒険家をやめることになった」
「……」
「あんたは一度ころされているのと同等の仕打ちを受けている。だから、復讐をしたい。……違うか?」
「えっへへ、お前さんすごいねえ。ほとんど合ってるよ。だが……復讐なんてちっぽけなものじゃないかもしれない、ねい」
「え?」
「だからこそ、お前さんに持って行って欲しいんだよ……」
ルノルドは少し考える。復讐がちっぽけなものだと言ったこの男の真意が分からない。
「なあ、受け取ってくれるかい……?」
「ルノルド!どこ〜?」
上からリイコの声が。ルノルドを探しているらしい。途端に気の抜ける2人。
「どうしたのかねい。寒くて起きちまった?」
「リイコ、少し待っていてくれ今行、」
「うわあ!床が開いてる!もしかしてここにもお宝が……!?あれっ!?」
「ルノルドサンじゃないですか!ここにいたんですね!」
「あんたも起きてたのかい。マウノネオ」
「えっ!?け、剣持ってる!?おじちゃんって敵だったの……!?」
「なんだか気が抜けるなァ。あんたたち」
「……っていうか、今『ここにもお宝』って?」
「あ!そうっ!ルノルド!このおじちゃん、宝を隠してあったの!50個くらい!」
「いやいやちゃんと数える前ですけど、100個はあったっスよ!」
「そ、そんなにはねぇなあ……」
おじちゃんが思わず間に入る。ハッとした顔。
「あんた、宝は全部売っぱらったって、」
「……えっへへ、バレちまったかい。どうしても売れない物ばかりだよ。困ったねい」
貧しい暮らしをしている彼が、値打ちのつく宝を売れないのだ。それだけの魅力を感じていても、尚。
「あんたが俺に刀を持たせる理由が復讐じゃないならなんだと言うのか、俺には分からない。だが……」
「だが、もう一度冒険がしたいんだろう。それなら、一緒に行こうぜ?」
「え、おじちゃんもいいのかい!?」
「キャンピングカーは定員オーバーじゃないですか?……あいてててっ!」
ルノルドがマウノネオの耳を引っ張る。
「ラトが飛ぶからいいさ」
「……か、可哀想」
「おじちゃんの方が可哀想さ。あ、そういえばこんなに話し込んでいたのに名前を聞いていなかったね」
「俺ぁ……ヒラガキ。いやあ、他人に名乗ったのなんて何百年振りだろうねい」
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