第7話 いつもの朝

いつものように朝起きると、アオちゃんが朝ごはんを用意してくれている。

今日はいつもの卵焼きに、コンソメスープの香り。この香りはアジと味噌だろうか。

「おはよう、貴羽」

穏やかなアオちゃんの声に、目をこすりながらあくびをして応える。

「おはようございますアオちゃん。今日の朝ごはんはなんですか?」

まだうとうとと重い瞼でアオちゃんのいるキッチンに行く。ゆっくりと手元を覗き込んでみる。

「今日の卵焼きはほうれん草を入れてみたよ。昨日の残りのコンソメスープに、アジの味噌焼き」

「美味しそうです〜」

ふわふわしている、とアオちゃんによく言われる。朝の記憶はあまりないから、肯定も否定もできない。

「貴羽、もうできるから顔洗っておいで〜」

手際よく調理をするアオちゃんから離れ、慣れた家を歩く。洗面所で顔を洗うと、すっきり目が覚める。私は夏も冬も関係なく冷たい水で顔を洗う。そうじゃないと目が覚めないのだ。朝が弱い。

私の部屋の向かいがアオちゃん用の部屋になっている。何時に起きてもアオちゃんはリビングにいた。何年も一緒にいるのに、未だアオちゃんの生態は謎に包まれている。

――アオちゃん、モテるのに彼氏といるところを見たことない。

実際、アオちゃんに彼氏がいたことがあるのかはわからないが。私がいるから彼氏が作れない、なんてこともあるのかもしれない。だとしたらこの関係はあまりいいモノではない。それでも私がアオちゃんと一緒にいるのは、小さい頃のアオちゃんの言葉が忘れられないからだ。

顔を拭いて、鏡を見る。私の特徴的な顔を見ると、アオちゃんとの約束、思い出が呼び起こされる。

「……今日も頑張りましょう」

呟くのは、いつものルーティーン。

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