6 再会

 ~3行でわかる前回のあらすじ~


 王子が赤ちゃん化。

 扉の向こうから幼馴染の声。

 チソコが扉に突き刺さった。

 

 ~以上~


 股間から生えた剣は、部屋の扉を貫いていた。

 こうしている今も、部屋の中――妖精がいるらしく、さらには何故か幼馴染の声がした部屋の向こうでは妖精専用バル〇ンがもくもくと煙を立てている。

「抜けねえ……」

 扉を押して股間から生えた剣を引き抜こうとする。

 すると、頭の中で声が響いた。


【毒を検知しました。浄化開始します】


 これもどうやら股間から生えた剣の能力らしい。 

 すると、ドアの隙間から漏れていた煙も勢いを弱め、匂いも消えた。

 やがて妖精専用バル〇ンの煙は完全に消え、変わりに汚れ無き田舎の空気のような澄んだ空気に置き換わっていた。

  

【浄化を完了しました】

「便利なチ〇コだな……」

 改めて力を入れると、股間から生えた剣は簡単に引き抜けた。


「けほっけほっ、何なのよもう……」

 すると、剣を引き抜いた後に出来た穴から、羽の生えた小さな人型生物――異世界のイメージ通りの妖精が姿を覗かせた。

「こんなよくわからない場所でこんな姿になって、バル〇ンで死にそうになるだなんて本当信じられない!」

 椿己の目の前で悪態をつく妖精。

 何故か、その妖精の声は椿己にとって聞きなれた声。そして、その顔付は昔から見慣れたもので――

「……ハル、だよな?」

「え、もしかして椿己!?」

 幼馴染であるハルのものだった。


   〇〇〇

 

 改めて、王子の部屋に入る。

 広く、日当たりが良い部屋。中央には巨大なベッドが置いてあり、王妃はそこへ王子(赤ちゃん)を置いた。

「きゃわたん」

 王妃はそう呟く。確かにあまりにも大きなベッドに対して、小さな小さな赤ちゃんが座り込む姿は可愛さに溢れている。

「王妃様。もしかしてネット好きですか?」

「ネット? 網は別に好きじゃないンゴね」

 異世界にもネットがある可能性は今度改めて確認するとして、椿己はとりあえず現状を確認する。


 今ここに居るのは赤ちゃんに変えられた王子。妖精に変えられた幼馴染のハル。そして大事なチ〇コを剣に変えられた椿己。

「お母さま、それしまってください」

 そして血走った目でハルに対して妖精ジェットを構える王妃。

「ハルは妖精ですが、私の大事な友人です!」

「あと単純に赤ちゃんがいる部屋で害虫用の薬品は使わない方がいいと思います」

「……そうですね。王子と勇者様がそうおっしゃるのであれば、そこの害虫はとりあえず見逃しましょう」

 あまりハルと王妃は近づけない方がいいな――と思いつつ、改めて椿己はハルと王子に視線を向けた。


「二人は魔王に姿を変えられたのか」

 ハルと王子は頷いた。

「王子様、赤ちゃんに姿を変えられるだなんてかわいそう」

「ハル。君だって憎き魔王に妖精にされてしまったんだろう?」

「きっと、戻れますよね……」

「ああ。絶対に魔王を探し出して、元の姿に戻ろう」

 二人はお互いを励まし合う。なんかお互い声色が甘ったるく、恋心が見え隠れしている――ちなみに見た目は赤ちゃんとフィギュアぐらいのサイズしかない妖精。

「で、椿己は何それ。ふざけてんの?」

「俺だけ当たり強くない?」

 すると王子が椿己の剣を眺めているのがわかった。

「勇者様、ですよね。貴方も魔王のせいでそのようなおもしろおかしい姿に?」

「おもしろ……あぁ、まぁ、そうだよ」

(そういうことにしておこう)

「これでわかりました。魔王は、人間の身体をおもしろおかしく変える、そんな趣味を持っているということです」

 王子はその瞳に怒りの炎を燃やしていた。ちなみに見た目は赤ちゃん。

「あぁ、魔王め絶対許せない!!」

 俺のは女神のせいなんだよなぁ――と、椿己は脳裏に女神風SM嬢の姿を思い出していた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る