4 王様のムスコ(意味深)が大変だ

 玉座の間での召喚。椿己目線で言えば、異世界転生直後の珍事を経てしばらく経った頃。

 王は椿己を勇者と認めると、未だ全裸のままだった椿己の服を使用人たちに持ってこさせた。

 使用人が持ってきた服は見るからに上等な物。金の装飾を施した、中世で貴族が着ていたイメージがあるもの。

「とってもよくお似合いで――ぶっふぉwww」 

 使用人たちは服を着た椿己の姿を見てふき出した。

「すみません、くしゃみです――ぶっふぁwwwww」

「笑ってはwwwいけませんwwwwよwwwww」

 それはそうだろう。なぜなら、椿己は下半身からチ〇コの代わりに巨大な剣が生やしているので、普通のズボンを履けるわけがない。代わりに、なるべく下半身の露出を減らすために布を巻いただけだったのだから。

「なんだこの、オンラインゲームで無課金プレイヤーが一つだけレア装備当てたみたいな服装」

 

 ……とりあえず、全裸という問題は解消された(?)

 改めて、王は玉座に腰を下ろすと椿己へ語り掛ける。

「勇者様……ぶっふぉおwww」

「あんたは笑わないでくれよ」 


   〇〇〇 


 笑いが収まるまで実に10分程過ぎたころ。ようやく王は髭が似合う威厳のある顔付きを取り戻した。

「改めて自己紹介を致します。私はこの国、ドチャシコの国王――ナホール・ドチャシコと申します」

「……俺の名前は椿己」

 王――国王ナホールの名前に一瞬つっこみかけるも、気にしないことにした椿己は、自らも名を名乗る。

「先ほど見ていただいた通り、我が国は魔王との戦争状態にあり、戦況は――城内にすら敵の侵入を許していた程ひどいありさまでございます」

 国王ナホールは暗い声色で告げる。

「そして、昨日には……」

 涙をこぼし、辛い記憶と向き合うように大きな深呼吸を入れてから国王ナホールは昨日の出来事を口にする。


「――魔王に、私のムスコが……小さくされてしまったのです……」


「ムスコが、小さくされた!!??」

 椿己が聞き返すと、国王ナホールは大きくうなずく。

「なんてひどいことをするんだその魔王ってやつは! 男にとって一番大事なムスコを小さくするだなんて!!」

「椿己様、私のムスコのためにお怒りになってくださるのですね。私、感激しております」

 王ナホールは頭を下げる。

 その様子を見て、椿己は同じように下――剣になってしまったチソコに視線を向ける。

「気になるんだな、小さくされたムスコが。その気持ち、よくわかるぜ」

 俺も大事なムスコを剣にされたばかりだからな――と、椿己は優しい笑みを王ナホールへと向けた。

「椿己様、あなたのムスコも……しかし、表情から伝わる悲壮な感情。詳しくは聞きますまい」

「そうしてくれると助かる。俺にもよくわかってないからな」

 あとまた笑われたらむかつくのでな――とも心の中でだけ思う。


「王ナホール。解決の手がかりがあるかもしれない。恥ずかしいかもしれないが、俺にムスコを見せてくれないか?」

 椿己の提案へ、王は頷いた。

「ええ、もちろんですとも。こちらへ――」

 別室に案内しようと踵を返す王ナホール。そこへ、椿己は目にもとまらぬ速度で近づくと――


「そいやっ!!」

 ――王ナホールのズボンを、ずり下した。


 玉座の間にいた使用人から悲鳴が上がり、兵士たちが怒声を飛ばす。

「ふむふむ、これが小さくされてしまったムスコか」

 ズボンをずりおろされた王ナホール。その前に椿己は膝を付き、王ナホールのムスコ(意味深)と対面、分析をしていた。

「確かに、小さいな。きっと王ともなれば本来はもっと立派で尊厳のあるムスコだったんだろう。魔王め、なんていうことを……」

 王ナホールは突然のことで硬直し、いまだ使用人の女たちは悲鳴を上げ、兵士たちは剣を引きぬいていた。


「静まりなさい!!」


 そこへ、騒動が一瞬で収まるほどの声が響く。

 声の主は、いままで一言も声を発さずにいた王妃。

 王ナホールも、椿己も、その場にいた全員が静まり王妃の次の言葉を待つ中、王妃は再び大きな声で告げる。


「ナホールのチ〇コは、もともとミニマムサイズです!!!!!」

 

 その事実へほぼ全員が石のように固まった。

 ただ王ナホールだけが一人、大粒の涙を頬に伝わせていた。

 

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