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「非常に不愉快だね。そのなんだギブルとかいう男について尋ねられるのは。ワシが信用たる人物でワシの牧場から出荷されるものは、多少は値が張るかもしれんがそこには、ワシという人間の信用が加算されとるんだ。うちの牧場の商品は東部でもちゃんと流通しとる」
ミスター・アイザック・ヒッカム
ジョン・スミス保安官が刺すような日光を防止で避けながら保安官事務所に戻ると
「わしがおらん時は、おまえがわしの代わりなんじゃからわしの席に座っとれというに」
そうジョン・スミス保安官が言うと
「いえ」
保安官補のサムは断った。
この保安官補はどこまでも真面目だ。フルタイムではないがパートタイムで保安官事務所、保安官の仕事を手伝っている。パートタイムとはいえサムは逮捕権さえ持っている。
フルタイムではこのスウィング・シティの多くの住民と同様に小さな農場と牧場を営んでいる。
サムは真面目なだけに愛妻家、いや恐妻家だ。
サムの妻のベスが夫が安い手間賃でやや危険な仕事である保安官補を務めていることを快く思っていないのはジョン・スミス保安官もよく知っている。
以前ベスはどことなく遠くを見て目を合わせてくれないだけだったが、最近はグローセリーで会ってもジョン・スミスは軽い敵意のこもった目で睨まれるようになった。
「何かあったんですか? 」
サムが尋ねた。
真面目な男は生真面目なだけに日々や日常のほんのちょっとした変化に鋭い。
ジョン・スミスは隠すことなく答えた。
「ソーントン強盗団がこっちに向かっている。夕方か晩飯時には着くだろう」
ジョン・スミスは事実だけ伝えた。
サムは露骨な表情として出なかったが、頬は若干緊張し目は完全に
「う、撃ち合いになるので、、、、」
「なぁーに、連中がおまえさんのでかい体を見て素通りすることもあるさ」
サムは、街でも一、二なほど体が大きい。
だが残念ながらサムも銃の腕前はジョン・スミスとどっこいどっこいだ。害獣駆除用のでっかいライフルしか撃ったことがない。それも害獣に命中させ殺すのではなく威嚇用に発砲しているだけである。
留置場で金属製の皿が派手にひっくり返る音がした。
「保安官さんよ、こんな小さなパンのかけらだけじゃ、夕食まで持たねぇよ」
昨晩この街に迷い込んできた乞食のギブルだ。
「朝は昨晩のウィスキーがどうのって食わなかったくせになんだ」
サム・ボルトンが叱った。真面目なサムは、噛みタバコ、葉巻はおろか酒すら飲まない。
ジョン・スミスは何も言わず。いつもの保安官の席にどかっと座るとブーツごと足を机に上げた。そして実用一点張りの古い掛け時計を見て、昔の悪い癖である大きなため息を一つ。
保安官はわざと暇をつぶしている様子だ。
「昼がこんな少ないって、保安官補さんよ、、思わなかったんだよぉ」
「カチカチの五年前のクラッカーかトウモロコシの種でもやれ、あの男は夕食にはありつけんかもしれんぞ」
「いくら名の知れた強盗団でもよぉ。乞食から奪うものなんて無いだろう。保安官さん殿よ。でも昨日の晩はサイコーだったなぁ。ウィスキーはちょっと臭かったけどさぁちょうどよく酔っ払って、ほんで持って
「それでコチンーっと逮捕されとるんだろう」
と保安官。
「そうだった。でも夜としてはサイコーの覚えておくべき夜だったぜ。ドネッタってのがね、、、、」
「それより、ギブルお前はどこから来たんだ? そのウィスキーは盗んだのか?どうやって手に入れた? まさかヒューロンから来たのか」
「冗談言うない。ちゃんヒッカム牧場で働いて手に入れたのさ」
ヒッカム牧場と言えば、街の北にあるかなり大きな牧場だ。アイザック。ヒッカムならジョン・スミスも幾度か会ったことがある。豊かなカイゼル髭を生やしいつもベストを着用している大男である。
ただこの土地の北に先着したと言うだけだ。
ド堅気の牧場だけにギブルのような男を臨時で雇うだろうか? 。
「そこから歩いてか? 」
「走るよりは楽だろ」
これが恐ろしいことだが、中西部の堅気のカウボーイも基本は明日をも知れぬ
「保安官そろそろ時間が、、、、」
サム・ボルトンが保安官を促した。それでもジョン・スミスは動こうとしなかったが一息つくと
「そろそろ向かうかな? あんまり気が進まんが。良いパーティと決断することが難しい会議には遅れるに限る。どうせいみんなでやいのやいの言ったって、いざ命をかけるとなったら何にも決まらん。サムお前も着いて来いそのデカい身体が必要になるかもしれん」
サム・ボルトンの頬が少し緩んだ。
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